異世界転移、転生もの:ナルニア国物語、私の原点<福山桜子:なんということもない話>
チート能力で勇者になる…どころか、悪役令嬢、スライム、蜘蛛、剣、自動販売機にまでなる異世界転生もの、異世界転移ものの世界とバリエーションはとどまるところを知りません。
私は漫画でもアニメでも、異世界ものがとても好きです。いわゆる、ファンタジーというジャンル分野ですね。とにかく無類のファンタジー好き。
これはもう私は筋金入りの自負があります。10歳とか、そのくらいから?ええ、そりゃあ私が小学生の頃といえば何十年も前のお話ですから、ラノベや漫画、アニメの影響ではありません。
私の原点は、『ナルニア国物語』です。
イギリスの作家、C・S・ルイスの作品で1950年〜1956年に出版された全7巻の作品で、こちらは転生ではなく、転移もの。大冒険の物語は1940年、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィという四兄弟が第二次世界大戦のロンドン空襲を避け疎開した先の、片田舎の大きなお屋敷から始まります。
顔までもしゃもしゃの白髪の変わり者の学者先生が住んでいるのは、食堂まで10分もかかるような大きなお屋敷。疎開した翌日、子供たちは、外に広がる森や川で遊ぶ予定だったのですが、ざあざあと雨が降っていたので、大きなお屋敷の探検をすることにします。そして、がらんとした部屋にあった大きな衣装だんすの中に、末っ子のルーシィが、入っていくと、、、
リトル桜子は、もう、どうしてもナルニア国に行きたくて、家の衣装だんすはもちろん、人のお家にお邪魔して衣装だんすがあると、とりあえず中に入ってみないことには気が済まない子に無事に育っていきました。
瀬田貞二訳の岩波書店のものがマストでお勧めです。できればハードカーバーでポーリン・ダイアナ・ベインズの挿絵もしっかり楽しんでほしい。繊細で、愛があり、世界観の広がる素晴らしい挿絵。私の両親は毎年、私と姉と弟とそれぞれ好みであろうカレンダーを送ってくれていたのですが、ポーリン・ダイアナ・ベインズの絵のナルニア国物語のカレンダーは何年にも渡って私の部屋の壁を飾っていました。外さずに毎年増えていったカレンダーは今でもとってあります。
ファンタジー好き桜子はこの後『はてしない物語』なんかに出会ってステップアップし、異世界LOVEは、本や漫画やアニメに留まらず、自分が主役になれるドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーと、ロールプレイングゲームの世界にも没入していき、自分も物語を創る側にまわるようになりました。
そして最近思うのです。
ファンタジー。魔法がある。動物が喋る。洞窟があり、不思議な島があり、立ち向かうべき苦難がある。うまくいくことばかりではない。出会いがあって冒険がある。「現実では出会えない世界」への扉は、この世の中が不安定になればなるほど開かれるのではないか。少しでも日常生活を忘れたいという願望が、自分の力を試しながら冒険していく未知なる世界に焦がれるのではないか。
私は、舞台、映画、ライブの演出、脚本を仕事にしています。
最も大事にしているのは世界観。
そして、劇場という特殊空間に入り、物語が始まったら、一切外の世界を忘れていただけるような作品にすることを大切に考えます。
『素敵な現実逃避』であること。これは私の創作活動の大事な理念です。
生きていくのは本当に大変で、いつでもキラキラと前を向けるものではありません。が、ほんのひとときでも、現実を忘れられる「想像力の産物」というのは、人間の編み出した凄まじく高性能なエネルギー装置のように思います。
ナルニア国物語、いまから70年以上前の異世界への物語、私の原点。
ぜひ、読んでみてください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?