分け合う幸せと、抱える痛み
「お酒を飲まないで、もう止めてね」
一時帰国して断酒のために入院している父に最後に残した言葉だ。 なんとも残酷な言葉だったろうと今私は振り返る。
優しい父だった。
週末には家族で外食。
人気になる前のおもちゃ、父はどこからか聞きつけて買ってきた。
私が欲しいという前に。
高級な果物は買って私がいつでも食べられるようにしてくれた。
会社の帰りには近所のケーキ屋さんでデザートを。
学校が夏休みに入ると私は母に連れられて故郷の岡山に帰る。見送りに来た父の目には涙が溢れていた。「数週間離れるだけなのに」そんな風に思った。帰省客でごった返す中新幹線のホームで寂しそうな顔をしていたのは父くらいだったように思う。
お父さんは優しくて家族思いだと近所での評判。
頂き物は、人数分に切り分けてご近所さんに配った。父の口には入るのは、ほんとに小さなかけら。
「お父さんは?」という私に「みんなで食べるから美味しいんだよ」と父は返事をしたように記憶している。
でも・・・・欲しいものがたった一つ叶えてもらえなかった。
「お酒を止めて欲しい」こと
「ほんとに止めて欲しい?」と自分に問いかけた。
「父がお酒を止めたら、母の悲しい顔を見なくて済む。」
ある日、自分の心の声が聞こえてきた。母の側にしか見ていない自分がそこにいた。
父のことを理解したい と真剣に思うようになったのは、父が他界してから。
理解していけばいつか自分が理解にできるようになると思ったのだ。
いや、自分への理解が深まれば、父のことを理解できる。
心のジャーニーが私自身の人生の指針となっていく。
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