もうやめません?性的マイノリティと犯罪者混同するの。
詳しい事情は気分が悪くなりそうなのでしっかりと見ていませんが、ワコールがクロスドレッサーへの新指針を表明したことに対して、売り場に男が入ることを容認していると受取り、怖くてワコール利用しないなど、様々な言説が飛び交ったようです。
騒動を紹介したYahoo!記事(FNNプライムオンライン)
どうやらこの記事(と新指針のPDF)が発端のようですね。
共同通信の記事
新指針のPDF
https://www.wacoal.jp/news/newsrelease/files/8cc1bfa31c5ae2265933ad3f52981b67_1.pdf
ワコールの新指針に書いてあること
見ると、自社のサービスを必要とする困っている人に手を差し伸べつつ、従業員の安全を確保するための指針に思えます。
また、ようは「従業員が主観的に自社のサービスを必要にする人かジャッジするで」という趣旨で、「無選別にオールジェンダー受け入れまっせ」とは書いてませんね。
Yahoo! ニュースの記事のような趣旨(性的意図を持つ男性客)ではなく、乳腺が発達するなどして、適切なサイズが分からず困っている顧客対応の話をしているように読めます。
女性ホルモンを投与し、乳腺が発達し、女性化していく友人を目にしたことがある私としては、素晴らしいことだと思います。
「新宿二丁目で働く人」がトランス当事者とは限らない
ただ、Yahoo! ニュースの新宿二丁目で働く人のコメントのように、「行けない」人は多いでしょうね(記事では「行かない」と書いていますが)。
そもそも、新宿二丁目で働く人といっても、女性の格好をしていてもトランスジェンダーではない人など、色んな人がいるので、その方がどのようなアイデンティティか分かりません。(記事上の動画を見ると、インタビューに答えている人は普段は、多目的トイレ利用の必要性を感じておられないようなので、普段は女性の格好をしていないように感じました。)
しかし、女性の下着ばかりが並ぶ店というのは常に性別を問われます。トランス女性だろうがトランス男性だろうがノンバイナリーだろうが「怖くて入れない」「できれば行きたくない」と考えるのが自然だと思います。
特に自分の外見に自信を持てない移行期の当事者が行くかな?とは強く感じます。
対象外とされながら困っている人をすくい上げる新指針
だからこそ、この指針は良いなと思います。
間違った下着選びで、胸をいびつな形にさせないための下着メーカーとしてのミッションを感じます。
その意味で誠実ですし、商業的にも筋が通っています。
繰り返しますが、移行期の人はまず怖くて下着の実店舗に行くことはないでしょう(若い子なら母親同伴で行くかもしれません。そもそもこの指針自体、親子連れのトランスガールの対応を想定しているのかもしれませんね)
多くの大人の当事者は、実店舗ではない解決策を模索するでしょう。胸のサイズの測り方をネットで調べたり、下着の身につけ方を動画で見たりして、そのサイズの下着をネットで買うくらいではないでしょうか。
ただ、大手メーカーが「安心して来ていいよ」という姿勢を示すことは、トランス女性だけでなく、出生時に女性に割り振られたノンバイナリーや、トランス男性にとっても、価値あるメッセージです。
出生時女性に割り当てられた人にもメリットがある
これは聞いた話なので、正確な情報ではありませんが、大きな胸に悩むトランス男性が、長年無理に胸を潰したために、いざ手術で乳房を切除しようとしたら、胸の形が変形してしまったために大きな傷が残る術式しか選べなかったことがあるそうです。
もちろん、ワコールが胸を抑えられる商品を出しているわけではないので、直接的な意味はないと思います。でも、メッセージを出してくれることで、中長期的に今の慣習では対象外にされて困っている人が適切に下着メーカーを頼れる下地が作られると思うんですよね。
下着は何よりも日々を快適に過ごすためのもの
下着は性的なアイコンの印象が強いですが、身体を包み込み、快適に日々を過ごすためのものです。
多くの女性はたぶん「きれいな胸にしたい」とか、「他者に見られる」という前提がなくても、「ワイヤーが脇に当たらない適切なサイズを測りたい」と、お店を頼ることもあると思うんですよね。そんな「自分のためにお店を頼りたいけど、対象外とされて困っていユーザーをすくい上げる」のがこの新指針なのだと感じます。
と、一気に書きましたが、「マイノリティのために男が入り込む余地を与えていいのか?」と感じられた方もいるかもしれませんね。当たり前ですが、「与えていいはずない」です。
上記にも書きましたが、下着の第一義は、快適に日常生活を過ごすためのツールです。その利用用途を求めていないのはお呼びではありません。
また、第一義的な利用を望んでも、店員さんや他のお客さんにハラスメント行為をする人は排除されるべきです。それは男性か女性か、セクシュアルマイノリティかは関係ない話ではないでしょうか。だからこそ、ワコールもカスタマーハラスメントの定義を同時に行ったのだと思います。
温泉旅館で目の当たりにした「女性」の非礼
先日、温泉旅館に行った時、うんざりすることがありました。
私は身体的には女性なので、女風呂を利用しますが、なるべく人がいない時間帯に人目につかないように入るように心がけています。ぱっと見の印象は男性ですからね。(服を着てる間はに人に見られないようにします。なので、利用客が多い場合は入浴を我慢することも多々あります。)
その時、浴場には合計5人のお客さんがいました。そのうち3人は脱衣所ですれ違うような感じでした。
もう2人は、露天風呂エリアにスマホを持ち込んで記念写真を撮ってはしゃいでいました。
入口に「NO PHOTO」「NO CAMERA」と書かれていました。外国人観光客が常習的に記念写真を撮っている宿だったのでしょう。
私は露天風呂に入ることは諦めて、さっさと部屋に戻りました。気にせず露天風呂に入ってやろうとも思いましたが、私の顔と体がもし彼らの写真に映り込んでしまって「男みたいな女」と嘲笑われたらどうしようかという葛藤も生まれましたし、そうでなくても、万が一にも映り込むのはまっぴらごめんです。
写真撮影していたのは女性でした(もちろん、セクシュアリは外見では分かりませんけどね)。
セクシャリティを問わず、非礼な行為をする人は一定数います。なのに、なぜ性別移行する人ばかりが警戒されるのでしょうか。
もちろん、警戒するなとは言いません。トランスジェンダーの中にも犯罪行為を平然とやる人はいるでしょう。でも、それって、男性も女性も同じですよね?むしろほとんどの盗撮や盗難などの行為って女性か男性がやってるんじゃないですか?
セクシュアリティと犯罪を結びつけないで
そもそもトランスジェンダーだから犯罪行為をしていいとも誰も言っていないですよね。しかしトランスジェンダーが誰もが享受できている権利を取り戻そうとすると「トランスを騙れば何をやってもいい」と論点をすり替えられてしまうのです。それは一体なぜなんでしょうか?
どうか騙されないでください。犯罪をしていいセクシュアリティなんてありません。
当事者たちからはトイレも更衣室も公衆浴場も「性自認を主張すれば女のスペースに入れる」なんて言説は聞いたことがありません。
多くは「怖くて使えない」や「個室や貸し切りないかな?」という言葉です。
どうか、女性を含めたマイノリティの安全や権利を脅かそうとする言説に呑まれないでください。
ちなみに新宿2丁目で働く人が本当に女性ものの下着で困りごとを抱えているか?疑問に思ったのはこんな考えがあるからです。よかったらこちらもご覧ください。
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