書評「トーラーの名において」(9/9)
「トーラーの名において」の日本語訳は2010年4月1日に出版された。その2週間後、4月15日に著者のヤコブ・M・ラブキンが来日し、日本記者クラブで講演をしている。以下はラブキンの講演の発言の一部から。
シオニズム運動を起こした人々は、世俗的に無神論者であった。しかし「聖なる土地」「約束の地」「選ばれた民」という言葉がシオニズムの中で使われる。それはイスラエルという国家が宗教的に裏打ちされた国家であると言う主張である。この矛盾の中に成立しているのがシオニズムだ。
アムノンラッズ・クラック・コツキンというベエル・シェバ大学の学者は、まさにシオニズムを皮肉にも正確に捉えている。「この地に対するわれわれ(イスラエル人)の主張は、ひとことで言うならば、『神は存在しない。しかし彼(神)はこの地を与えてくれたのだ』につきる」
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「トーラーの名において」を読んで、ものごとの複雑さを改めて学んだように思う。それはイスラエルの歴史のみならず、日本の歴史、すべての現象において、それを追求した者だけが知る「複雑さ」かもしれない。それを難解がゆえに、真実を知りたくないがゆえに、ものごとは暗澹としているがゆえに、さまざまに理由で拒絶する者が、計り知れないほど数多く、マジョリティーを形成していることを承知の上で言うならば、これからの複雑さの中の事実を直視し理解を重ねてゆくことは、生きる意味だと確信した。そして、複雑さを紐解く者は愚かさから少しずつ離れ、その暗澹たる現実は冷静さを与え、心に客観性が生まれる。感情や感性は、表面的ではなく深い世界から生まれ、その道を真っ直ぐな光で照らされた表現へと導いてくれるだろう。
まだまだ読みきれない多くの問題を自覚しながらも、ヤコブ・M・ラブキンの解き明かしてくれた世界に感謝したい。
「ナクバの日」公演
1948年5月14日、ベン・グリオンはイスラエルの独立宣言を読み上げた。それと同時に、パレスチナ人の土地はイスラエル軍によって奪われ、多くのパレスチナ人が殺された。この日をパレスチナ人たちは「大災厄の日」、アラビア語で「ヨウマル・ナクバ(ナクバの日)」として歴史に刻んだ。イスラエルの独立宣言を読む白拍子に発砲スチロールを投げ、パレスチナの詩人マハムード・ダルウィッシュの詩に耳をかたむけて、哀悼の意を捧げに来てください。
日時:2023年5月15日(月)19:00 open 19:30 start
料金:¥2,000+1drink
出演:桜井真樹子(白拍子)、 HIKO(ドラム)、竹田賢一(大正琴)
場所:イエロービジョン 東京都杉並区阿佐谷北2丁目2−2 地下1階 阿佐谷北二丁目ビル(JR阿佐ヶ谷駅北口より徒歩1分)
https://www.sakurai-makiko.com/blank-6/nakuba
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