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グロの谷、エロの沼

同じことを言っているのに、気持ち悪い人と気持ち悪くない人がいる。できれば気持ち悪くない人になりたい。さらに望むのであれば、気持ち悪くないにとどまらず、面白いと呼ばれるまでになりたい。下ネタについての、一考察を述べてみたい。
 
そう思い立って、書き始めてみたものの、どのように着地できるかはまだ決めていない。ポジ抜け(ポジティブな結末)できるかどうかもわからないが、「グロの谷、エロの沼」というタイトルから思いつくままに書いていく。
 
下ネタは、親父ギャグと同様、じっくり考えるものではなく、刹那的に思い浮かび(思い浮かんでしまい)、自分のなかに収めておくことができずに口からでてしまうものである。それが気持ち悪いということは、そのときに発する言葉のみならず、普段の立ち居振る舞いから気持ち悪いケースが多いように思う。だからといって、普段の振る舞いを変えようとすれば良くなるかというと、むしろ、もがけばもがくほど、気持ち悪くなるのは想像に難くない。
 
この状況をぼくは、『グロの谷』と呼びたいと思う。気持ちの良い(少なくとも気持ち悪くない)下ネタを言える人は、グロの谷を越えている人のことである。グロの谷に苦しんでいる人の特徴は、自分がおいしい思いをしたいという下心が見えてしまうことである。下心は消そうとすればするほど、浮き出てくるような特性を持つため、グロの谷を抜け出すことは容易ではない。
 
グロの谷をどう抜け出すか、営業活動を題材にすると分かりやすい。車でも保険でもなんでもいい。この人から買って良かったと思った経験、この人からは買いたくないと思った経験、買ってから損したと感じた経験を思い出してみる。
 
「こいつ、なにか売りつけようとしてるな」
 
そう感じたとき、急に冷めたような、話を聞きたくなくなるような感覚になったことはないだろうか。この感覚がグロの谷に似ている。どうも話が盛り上がらないなとか、もっと楽しく話をしたいなと思ったときには、どんな話をしようか、と話のネタを考えてしまうが、その時点でグロいのである。相手はあなたと話したいとは思っていないことに気づくことが先で、相手が誰か(あなたでなくてもいい)にどんな話をしたいと思っているのか、考えることが、グロの谷から抜け出す第一歩になる。
 
よく恋愛のマニュアル本にある、変化に気づきましょう、髪型が変わったら気づいて声をかけましょう、というアドバイス。これに対し、「髪切った?」は愚の骨頂。まるでだめ。相手は新しい髪型が似合っているかどうかを気にしている(似合っていると思っているor失敗していると思っている)のだから、さらりと「いいじゃん」と肯定するのが正解だと思っている。髪を切ったかどうか、事実確認することに意味はない。仮に髪を切ってないとしても、
「いいじゃん」→「なにが?」→「髪切ったでしょ?」→「切ってないけど……」→「そう? でもなんかよくなったよね」
これでいい。抽象的ではあるが、矢印の向きを変えるのである。自分のためではなく、相手のためになるかを意識して言葉を選べば、グロの谷を越えることができる。
 
グロの谷を越えたとしても、「エロの沼」が待っている。面白い下ネタが言えるようになって、楽しく話をしていても、次第に会話が跳ねなくなるのである。真面目な話に戻そうとしても、下ネタというパンドラの箱を開けてしまうと、なんでもかんでも下ネタと組み合わせて考えるようになってしまい、紺野ぶるまのエロ謎かけのような状態になってしまう。
 
残念ながら、このエロの沼を抜け出す方法を僕はまだ知らない。エロの沼があるということを念頭におき、エロの沼に入ってしまったと思ったら、楽しいと思えているうちに、早めに席を立って場所を変えるしか方法がない。エロは食事と同じ。腹八分目がちょうど良い。

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