「世田谷におけるインクルーシブな教育の実現に向けて」 〜第4回定例会一般質問より
インクルーシブ教育に対する教育委員会の認識
全ての人を包摂するインクルーシブ教育の是非を論じることは、「奴隷制度やアパルトヘイトの廃止と同等」の必然性を持って議論されなければならない、インクルーシブ教育は人権問題としての理解と実践が行われるべき問題である。これは、ユネスコが指摘し、世界的に共有・賛同を得ている考え方です。
改めて、共に学び共に育つインクルーシブ教育をすべての人が持つ「人権」としてとらえ、現在策定中のインクルーシブ教育ガイドラインを作成することが重要です。ガイドラインづくりは全国的に見ても先進的な取り組みの1つです。だからこそ、責任の重さへの自覚が必要です。
【質問】
ガイドライン作成にあたって、インクルーシブ教育ガイドライン作成委員会として「インクルーシブ教育」をどのように捉え進めているのか?改めて区教育委員会の認識を問います。
【答弁】
新しい学校教育の創造には、多様な個性を持つ子どもたちが同じ環境のもと多様な学びの選択肢を持ち、子ども自らが個性に応じてその学び方を選ぶことが重要であり、これは共に学び共に育つインクルーシブ教育の理念の基盤であり新たな教育へ転換を意味しています。
質の高いインクル-シブ教育の実現のためには、新しい教育観を持ち一人一人に寄り添える教員の存在と多様な学びに対応できる学校体制が必要となることから、従来の枠組みにとらわれることなく、共に育ち共に学ぶ環境構築が重要です。
インクルーシブ教育の理念の実現のためのガイドライン作成に着手したところですが、現場の理解の推進が重要であり、そのために方向性や方針を確認しながら着実に進めてまいります。インクルーシブ教育の理解は一朝一夕に進むものではありませんが、拗ねての学校が多様な子どもたちが安心して通うインクルーシブ教育が実践される学校となるよう全力で取り組んでまいります。
インクルーシブ教育ガイドライン作成における課題認識
10月に第3回の作成委員会を傍聴しました。作成委員会のメンバーは、特別支援教育に関わりのある人がほとんどという印象です。改めて指摘する必要はないかもしれませんが、「特別支援教育は、分離教育」であり、インクルーシブ教育ではありません。インクルーシブ教育のガイドラインを作成するにあたって、従来の枠組みの教育、つまり分離教育の経験に基づく思考から脱することが出来ているのか、疑問を持ちました。
【質問】
現状の議論は、既存の取り組み・特別支援教育の範疇に視点がとどまっています。委員全員が、新しい教育のためのガイドラインを作成しようとしているという共通認識に立ち、目標に向かう必要があります。また、ガイドラインがマニュアルにならないよう議論を進めることが大切です。作成にあたっての課題認識を問います。
【答弁】
ガイドライン策定に向けた委員会では、誰一人取り残すことなく、すべての子どもたちが共に学び共に育つインクルーシブ教育を推進するためのガイドラインを作成するために外部有識者を交えてこれまで3回の議論を進め、世田谷区の児童生徒の実態を捉え、今後に向けた論点整理を行いました。
論点整理を進める中で区の関連する条例や、教育振興計画、「(仮称)せたがやインクルージョンプラン」等の趣旨を踏まえて、より広く対象を検討する必要があると認識し、様々な理由により不安や悩みを抱えている児童・生徒の実態等について議論を進めてまいりました。
ガイドラインについては、今後、くの掲げているインクルーシブ教育の理念が幅広く配慮や支援を必要とする子どもたちへの教育に反映され、教職員一人ひとりが正しく理解し、実戦に活用できるものになるように、作成を進めてまいります。
インクルーシブ教育ガイドライン作成委員会の再構成を求める
【質問】
以上のことから、今後のガイドライン作成にあたって、作成委員会構成の再考を求めます。さらに、今の路線のまま拙速な素案づくりをせず、丁寧にインクルーシブ教育について認識を高める取り組みを行うことも求めます。見解をお聞きします。
【答弁】
作成委員会は、今年度大学教授を委員長とし、区立小・中学校の校長や特別支援コーディネーターの教諭、都立特別支援学校の校長等から構成されており、年度の切り替え等により委員会を再構成することとしており新しい検討課題に対しても委員会において検討してまいります。
素案の作成にあたっては、委員会の委員自身がインクルーシブ教育に対する理解を深めることが、従来の枠組みにとらわれることなくより良いガイドラインを策定する上で必要であると考えております。
このため委員会においては、インクルーシブ教育を含め学校教育のあり方についてこれまでいただいたご意見や先進的な実践に取り組んでいる方々のご意見等も幅広く伺いながら、素案の作成に取り組んでまいります。
質問を終えて
今年度は、「世田谷区教育大綱」「世田谷区教育振興計画」や、「世田谷区基本計画「せたがやインクルージョンプラン」などの策定が重なり、各計画にインクルーシブ教育が位置付けられる予定で議論が進んでいます。各案が示されるのは来年2月ですが、今後の取り組みの方向性が決まる大切な時期と考えています。
さらに、インクルーシブ教育推進の道筋をつけるガイドライン作成が進められているなど、世田谷の教育が大きく動き出しています。特に、世田谷区が作成するガイドラインは、他自治体にも影響を与えるものだと考えると、策定にあたっては手を抜くことはもちろん出来ません。
質問では随分ときついことを言うな、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし議論を進めるためには、はっきりと問題点を伝えることは大切なことです。
これからも、問題点を明確に指摘しながら、めざすべき教育「インクルーシブ教育」の実現に向けて活動を進めてきたいと思っています。