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『アオのハコ』20話/大変だから、やることにする。

アニメ『アオのハコ』20話視聴。ラブコメ要素が強い回だったけど、恋愛以外で大喜の良さが垣間見える回だった。とくにピンチヒッターを引き受ける大喜の心理描写がとても良かった。思ったことを書いておく。

#ネタばれあり

●努力した人へのリスペクトとブーメラン
学園祭での劇の開演間際に、ケガをした王子役の代役をやって欲しいと頼まれる大喜。けど大喜はとてもできる気がしない。女子の一人が大喜に向かってこう言う。「猪俣も見てきたでしょ。みんなの練習を無駄にしないように、引き受けてくれないかな。」その言葉への大喜の反応が印象的だった。それはこんな反応だ。

大喜は「練習見てたから大変さがわかるんじゃん」と思う。
でも雛を見てハッとする。そして引き受ける覚悟をする。

何が印象的だったのか。私の勝手な解釈を書く。
大喜は「頼まれていること」の重大さを「練習した人たち」より高く評価しているのだ。本気で頑張っている人ほど「自分の努力」を過小評価してしまうことがある。だから安易に「大喜でもきっとできるはず」と思ってしまう。でも大喜はそういう人たちとは違う。彼は自分の努力も過小評価しない人で、だからこそ「頑張っていた人の代役」を軽く受けることはできない。大喜が安請け合いできないのは「努力した人へのリスペクト」の結果だ。つまりそれはある種の誠意でもある。
でもそういう属性の大喜は、結局引き受けるしかない。代役を軽く見ることができない大喜の属性は、穴を埋めることの重大さを誰よりもわかってしまう属性と同じものだ。「大変さがわかるから軽々しく受けられない」という大喜の心の声は、そのまま「それがわかるお前だからこそ、お前がやるべきなんじゃね」というブーメランとして戻ってくる。雛の顔をみてハッとしたのは、そのブーメランに気づいてしまったからだ。雛の顔の奥に努力が透けて見える。大喜は「あー、もうわかった、やるよ」と言う。逃げ道はすべて、自分の属性がふさいでしまっていたのだ。彼にできる抵抗は「少しキレ気味でいう」くらいしかない。そういう属性が「大喜の良さ」なのだと感じられる、印象的な良いシーンだったと私は思う。

●「努力へのリスペクト属性」は恋愛に飲み込まれない
大喜の属性は「努力へのリスペクト属性」とでも呼べるものだ。自分に対しても他人に対しても、決して努力を馬鹿にしない。過度の謙遜もしない。そこが見ていて気持ちいい。その後の「キス騒動」に対する反応でも、その属性が垣間見える。大喜は、穴を埋めようと必死だった。それが「あの場のみんな」にとって、とても重要であることが人一倍わかったからだ。頑張ってきたみんなの努力は報われるべき。そう思って大喜は犠牲になる覚悟をした。だからこそ大喜はその結果が気になるのだ。俺はうまく穴を埋められたのか。みんなの努力は報われたのだろうか。でも、みんなはそんなことは忘れてしまっているように見える。高校生にとって、恋愛の話は楽しいのだ。それだけに、それ以外の大事なことを安易に見失ってしまう。それが大喜には受け入れられない。むかむかする。その怒りは彼の誠意の裏返しだ。そしてそれはきっと、どこかでブーメランとして大喜自身に戻ってくる。そのブーメランと闘いながら、彼はどんどん成長するのだ。大喜は、そういうタイプの成長ができる人間なのだろう。雛と千夏先輩が大喜に惹かれるのも、ちょっとわかるような気がするなぁ。うらやましい。

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