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映画「言の葉の庭」/弱い人が持つ資格

先日、自分の投稿したAmazonレビューがすべて消えてしまった。悲しいけど消すのはAmazonの自由だ。Yahoo映画に投稿したレビューもいつ消えてもおかしくない。それも消えてしまったら悲しいので、過去にYahoo映画に投稿した内容をNoteにも書いておく。(2022/5/1投稿内容の自分用備忘録)

#ネタバレあり

弱さは人を不安にする。そして苛立たせる。
でも、弱さだけが持つ「大事な資格」のようなものがある。
ちゃんとした弱さを持つ人が、弱さゆえに深く傷付いてしまったとき、
弱さを失わずにちゃんと歩くためにはどうしたらいいのか。
私はこの作品を、そういうお話と感じました。

ヒロイン(ユキノさん)は、弱い人だ。
その弱さは、人間関係のいざこざを一手に引き取ってしまう。
一人で背負いこむことはないのに、と皆が思う。
彼女に好意的な生徒ですら、そういうところに苛立っている。
でも、タカオが惹かれたのは、彼女の持つ「根本的な弱さ」だ。
タカオがユキノにだけは秘密を打ち明けたのは
恋愛感情よりも、そういう「弱さへの信頼」があったのだろう。

ユキノさんは、自分の意思どおりに「うまく歩けない状態」だった。
学校に行こうという意志があっても、足はそちらには向いてくれない。
でも「弱さ」を手放して、強くなってしまうことはできない。
彼女は公園で「弱さと共に、ちゃんと歩く」方法を模索していた。
そして、そんな彼女にタカオが見せてくれたのは、
「ちゃんと弱く、ちゃんと意志をもってあるく姿」だった。
その姿に彼女は救われ、弱いまま歩く力を身に着けたのだと思う。
最後に彼女は、自宅から外階段のタカオのところまで、
自分の意思でちゃんと歩く(実際は走るのだけど)。
あの距離を歩くために、彼女の公園での時間はあったのだ。

そして、彼女はそこで「隠していた気持ち」を彼に伝える。
それは押し留めることができないほど「強い思い」で、
だからこそ、それが彼女を呪いから解き放って、
ちゃんと歩かせたわけだけれど、
その「強い思い」とはどんな思いだったのだろうか。
そこにはもちろん、恋愛感情と呼べるものが含まれていたとおもう。
けれど、より強かったのは「あなたは、私をちゃんと救ってくれていた。
それをあなたにちゃんと伝えたい。」という思いだったと思う。
それはタカオが「本当に必要としていたもの」と一致していたはずだ。
そういう、人生のすごく大事な場面で
「本当に伝えたいこと」と「相手が本当に必要としていること」を
びたりと一致させる力が「弱さの持つ大事な資格」の正体ではないか。

きっとこれからタカオが作る靴が、靴を作り続けるタカオの存在が、
弱さを失わない彼女を、もっとたくさん歩けるようにするのだろう、
そういうラストだと感じました。

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