【シロクマ文芸部】月めくり

　今週もシロクマ文芸部に参加します。
　ショートショートです。

【月めくり】
　月めくりカレンダーが好きだ。
「お母さん、カレンダーめくっていい？」
「まだよ。今日は8月31日でしょう？」
　ちぇ、明日までおあずけかぁ。

「お母さん、カレンダーめくっていい？」
「いいわよ」
　ふっふっふっ。一か月に一度の楽しみ。
　ぺりぺりぺり。この音がすき。

　そして、いらなくなった8月のカレンダーを、こう折って、こう折ると……。
「できた」
　大きなカブトの完成。
　おりがみは、僕の得意中の得意なんだ。

　周りをきょろきょろ見渡して、お母さんがそばにいないことを確認してから、それをかぶる。

　かぶったまま目をとじると、カレンダーに刻まれた思い出たちが、まぶたの裏に映し出される。まるでまぶたの裏映画館だ。
　8月1日　セミ取りをした。
　8月2日　プールにいった。
　8月3日～8月6日　おばあちゃん家に泊まった。
　……
　次々に映し出される思い出たち。
　みていると、セミ取りをしたときの草のにおい、日差しの強さ、汗のベタベタまで、はっきり思い出される。
　あの日もあの日もあの日も楽しかった。

　一か月の思い出をみおわって、そっとカブトをとる。

『ああ、８月本当に楽しかったな』
　自然と笑みが浮かんでいる。

『あれ？　何か忘れているような……？』

　隣室からお母さんが「夏休みの宿題終わったー？」と聞いてきた。

　……あ。【了】