【毎週ショートショートnote】海のピ
点Pは動くことにした。
恋心が加速して、止まらなくなったのだ。
点Pは点Qを追いかけた。
ある時は秒速30m、ある時は時速300㎞で!
しかし何度告白しても、点Qの答えはいつもNOだった。
ある日、点Pは教科書を抜け出して海にいった。
せまい教科書内で、失恋しつづけることに耐えられなくなったのだ。
海は広い。
点Pは海に飛び込んだ。
そこは素敵な世界だった。
魚が泳ぎ、サンゴが手を振る。
最高の気分だった。
だけど。
何をしても何をみても点Qが思い出される。
国語の教科書が言っていた「君ありてこそ」を思い出す。
点Qに会いたい。
海が温められ、やがて雲ができた。
点Pは雲の上から街を見下ろした。
街は宝石のように輝き、無限に広がっていたが点Pの心は決まっていた。
点Pは雨粒にのり、地上へ帰った。
まっすぐ点Qの元に。
*
今日も小さな教科書の中で点Pは点Qを追いかけている。
それが点Pの幸せだから。
教科書からは潮風の匂いがしていた。
(424文字)
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