【毎週ショートショートnote裏お題】真夜中万華鏡
真夜中、妖怪小豆あらいは一人の少女と出会った。
少女はうずくまって泣きそうな顔をしていた。
みると足を挫いている。
小豆あらいは、少女を背負い、家に送ってやった。
少女は何度も御礼をいい、庄屋の家の門をくぐった。
それ以来、小豆あらいは胸が苦しい。
妖怪と人間、それも庄屋の娘、叶わぬ恋であることは重々分かっていた。
それでも止められない。
深夜、人目を忍び、逢瀬を重ねた。
それは真夜中万華鏡のように一刻一刻が夢のように煌めいていた。
『会うのを最後にしないと』
娘の縁談が決まったと聞いた。
小豆あらいは、丁寧に洗った小豆を持参し、泣きながらそれを手渡した。
「心を込めて洗いました。これで赤飯を作って下さい。結婚おめ……グスッ」
「結婚? 誰がです?」
娘がきょとんとしている。
「……貴女が、結婚すると、噂で」
「それは庄屋の娘の話です。私はあの家の座敷わらしですから」
……え?
座敷わらし?
では妖怪だったのか。
ならば何の障害もない。
「僕と結婚してくれますか?」
「はい、もちろん」
小豆あらいは、ぎゅっと座敷わらしを抱きしめた。
星々が万華鏡のようにキラキラと輝いていた。
(490文字)
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