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Letter19 社会人二年目〜忘れられない日〜
私の送別会の日がやってきた。
支社全体の送別会で、ホテルを借りていた。
2011年3月11日。
私は朝、いつもどおり家を出た。
車は大学進学のために売ることにした。
その日は古い代車で通勤した。
職場に到着する頃には、車のガソリンはほとんどなく、
私は帰りに入れようと思っていた。
晴れた日だった。
その日は、私は内勤で、
いつもどおりに午前中の仕事を終えた。
検診車は、沿岸の方に出ていた。
午後は、施設内で先輩と書類整理をしていた。
その時だった。
机が少し揺れたような気がした。
広い社内を見渡す。
皆、「今揺れた?」
と話していた。
直後に、大きな揺れが起こった。
皆机の下に隠れた。
立っていられないような激しい揺れ。
書類やフィルムが保管されているスチール棚は、
大きな音を立てて次々と倒れ、
社内から悲鳴が起きた。
全ての電気が消えた。
大変なことが起こった・・・
すぐにそう思った。
しばらくして揺れは止んだ。
ふと時計を見た。
14時53分を指していた。
すぐに、その日は仕事中止となった。
皆家族に電話していた。
実家の母も犬も無事だった。
近くに住む祖父母のマンションに行くと言う。
携帯の電池がもったいないからと、
お互いの無事を確認したらすぐに切った。
先輩は、レントゲンの装置を確認しに行った。
必要最低限の確認をし、
慌ただしく、皆帰る支度をした。
私も身支度を整え、車に乗った。
ガソリンを入れなければ。
スタンドに向かった。
ガソリンスタンドは動かなくなっていた。
ガソリンが出ない。
皆引き返していた。
私は送別会で宿泊する予定だったホテルに向かった。
しかし、
危険だから入れない。
従業員の方に申し訳ないと言われた。
このガソリンでは実家まではもたない。
私はホテルの駐車場に車を止めた。
そこで一晩過ごそうと思っていた。
明日か明後日にはガソリンも出るだろう。
まだ、そんな気持ちだった。
日が暮れてきた。
全ての建物が暗い。
電気がつかない。
だんだん心細くなってきた。
私は慕っている女性の先輩に電話をし、近所にあるその先輩の家に泊めてもらうことにした。
先輩のアパートの部屋も、色々なものが散乱していた。
火と水は使える状態だった。
お湯を沸かし、電気のつかないこたつに足を入れた。
たまたま家にあったというカップ麺を夕食に食べた。
テレビはつかない。
ラジオで状況を聞く。
津波という言葉が聞こえた。
数十人が行方不明だと。
突然携帯に、昔の大学の友人から電話がかかってきた。
津波は大丈夫か?無事なのか?
と。
携帯の電池がなくなるから、
無事だと、お礼を伝えてすぐに切った。
別の友人からメールも届いていた。
頼むから早く連絡をくれと。
無事かだけわかればいいと。
私は状況が飲み込めていなかった。
北国の3月はまだ冬だ。
とにかく寒い。
冷たいこたつの中で震えていた。
先輩も一緒だった。
眠れたのかよくわからないが、
そのまま一晩こたつの中にいた。
家で寝られることが、ただただありがたかった。
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