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父が一度だけくれた手紙。フランス映画のような人生。誰の人生も等しく美しい。

心理カウンセラーの飯道さくらです。

秋ですねぇ。

最近、天啓を受けたように理解したことがあります。

そうか、父の人生は父が自分で選択し続けた結果で、だからそれは誰に何を言われる筋合いもない、とても美しい人生なんだと。それは私の人生も、誰の人生も同じで、何が起きていたとしても、誰の人生も愛にあふれる美しいものなんだって。この確信は、これからカウンセラーとして、誰かの人生の一部に向き合おうとしている私にとって、とても大切な気づき。そう思って眺めるとより一層、世界は美しい。(本日も私はロマンチスト)

お酒に逃げて、一人に世界に閉じこもっていた父の人生は、そう考えるとどこか、フランス映画のよう。薄暗い画面の中で、退廃的な香りのする複雑なストーリーが、よくわからないすっきりしない結末に向かっていく。それはハリウッド映画とはだいぶ違う。でも、違うってだけ。

私の父は、自分の出産時に母親が亡くなり、父親も中学生の時に事故で亡くなり、複雑な家庭で育ったけれど、頭が良くて、絵が上手で、歌が上手で才能あふれる人。本が好きだった父の部屋は壁一面、天井まである本棚で、そこにぎっしり難しい本が並んでいた。私は、父のその部屋が好きでした。いつも本を読んでいる父、何を聞いても教えてくれる知識人の父が自慢でした。

父が学生のころ書いた絵、上手♡


そんな父は、私が10歳の時、勤め先の出版社をリストラされ、そのあたりから、お酒に依存するようになります。普段は物静かなのに、酔っぱらうと急に陽気になったり、時には怒鳴り散らしたり。私の「酔っぱらう=悪いこと」という観念の原体験はここ。

年を追うごとに酒量が増えるので、母がお金を管理して父に渡さなくなります。そうしたら父は部屋にある本を古本屋に売って、それをお酒代に変えるようになりました。本を読む父が自慢だった私は、これがとても悲しかった。

私が社会人になってからは、夜遅くにお菓子やお酒が欲しくなったら、父に買い物を頼んで、おつりから100円あげるのが暗黙のルールでした。そうすると父はスキップするような足取りで出かけていき、いつも「鬼ころし」という100円の紙パックの日本酒を買ってきていました。

明け方まで飲んで、昼過ぎに二日酔いで起きて、少し仕事をして、趣味の自転車散歩をして、夕方から飲み始めるような父の生活。家族以外との接点はほぼない。私は父のことを情けないと思っていたし、父の弱さを責めていたと思う。言葉を選ばずに言えば見下していたかもしれない。父は何が楽しくて生きているんだろう?といつも不思議だった。


最近、父のことをよく考えるので、昔一度だけ手紙をもらったことを思い出しました。高校生の頃、父の日にプレゼントをあげたら、父がお礼の手紙をくれたんです。父が手紙をくれたのは、後にも先にもこの一度だけ。思い出して探してみたら、思い出のものをまとめている箱にちゃんと入っていました。

この手紙には父らしい愛が罪悪感まみれで表現されていて、父がどういう思いで生きていたのかも書かれていました。父の罪悪感を理解した今、読み返すと泣いちゃうね。私たちのために闘い続けてくれてありがとう、お父さん。それにしても、30年間この手紙を大事に取ってあるくらいファザコンの私です笑

母はよく、父を弱い人だと言っていました。
私もずっと本当にそうだと思っていました。でも、そんなことはなかったんだよね。

父はきっと、巨大な罪悪感や無価値感、自己嫌悪を抱えながら、それを誰にも言わず、誰にも頼らず、おそらく自分でもそのヒリヒリした苦しさが何かよくわからないまま、一人で必死に生きていた。そう考えると、ただただ「すごいねぇ、お父さん、よくがんばったね」と思う。一人で闘い続けていた父の強さに尊敬の念すら覚えます。「助けて」が言えたら、きっともっと楽だったんだろうけど…。でもそれすら父らしさだよね。

父のフランス映画は今、エンディング目前。私は薄暗いスクリーンの中で、まるで伏線回収のように父の愛・父への愛に気づく娘として立っています。バックにはフランス映画らしい、懐かしいようなロマンチックなメロディー。

ずっと父の人生を悲しいものと思っていた。でも今、父の人生の中に父らしい繊細な愛と強さと美しさを見つけることができて、私はとても嬉しい。

味のある映画だね、悪くない。私は好きだよ、お父さん。


父への理解が進んだきっかけの1つ。師匠のリトリートセミナーでフォーカスパーソンをやった時のレポです。

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