棺桶まで面白おかしく生きて行く
35歳まで結婚の気配がなければ、隣の部屋同士でマンションを買おう。
こんな約束をしている友達の一人から「私達の本があるねん!」と勧められたのが、藤谷千明さんの『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』だった。
ちなみに35歳という数字は、退職する60歳までに住宅ローンを無理なく完済するのに必要な期間を、自分達なりに計算した結果だ。あしからず。
大変中身のわかりやすいタイトル。私達がやりたいねと冗談半分で言っていたことを既にやっている人がいるとは。行動力がすごい。さすがオタク(褒めている)。
前述したマンションの購入を約束している5人の私の友達も、ジャニーズ、韓国アイドル、ソシャゲ等それぞれの沼で全身浴してしまっているので、同じ人種だと思われる。
そして私達は軍隊のような女子校で青春時代を過ごしたため、ほとんどが年齢=彼氏いない歴。白馬の王子様が国から一人ずつ支給されるのを待っている。結婚するより宝くじが当たる確率の方が高いのではと思い、今年に入ってから3回程購入した。全てハムスターが散歩中にビリビリに破いて塵となった。
アラサーになり約束が実現されそうな匂いがトイレの芳香剤ばりにプンプンしてきたところで、この本は私達のバイブルともいえよう。
ふむふむなるほど。簡単に言うと、様々なジャンルのオタク女性が集まり、ルームシェアし暮らすまでの過程と、実際の生活の様子が記されている。私と友達はルームシェアではなく、隣同士のマンション購入を検討しているが、友達と暮らすという広い意味では共通しているだろう。
読み始めて感じたことは、自分達のことじゃないかと思うくらいわかりみがすごい。というか友達の友達くらいでどこかで繋がっているのではとさえ思えるほどの親近感。
例えば、会話はすぐ大喜利大会になるし、お互いにしか送れないLINEスタンプを持っている。私の福山潤朗読スタンプなんて使い勝手フル無視の代物だ。
ぬいぐるみかペットか異性か。わかる。私は推しが所有しているのと同じぬいぐるみとヘアバンドを購入し、疑似同棲をしている。引かないでほしい。
そして今年の7月からハムスターを飼った。度重なる残業から不眠症になり、しばらく休職することになった私は、ほとんどの時間を家の中で過ごすことになった。今までは寝に帰るくらい(眠れていないが)だったのでなんともなかったが、空間に一人でいるのが耐えられなくなった。誰かにそばにいてほしいが、今は人間だと気を使う。
その点ハムスターはいい。私が何を思いのたうち回っていようが、彼はひまわりの種をむさぼり、カラカラと回し車を回すだけである。ヘケ。部屋の中で自分以外の音がするだけで落ち着くものだ。またお世話をすることで、自分以外のなにかのために生きられる自分、という自尊心も満たしてくれている。いつもありがとう。
また参考になることもたくさんあった。物件選び、審査、引っ越し、家事分担決めまでの流れや注意点がよくわかる。賃貸契約を検討している人は、この本をtodoリストとして活用すればよいと思う。一人暮らしの面でも参考になることが多い。例えば物件を選ぶ際、オタクはデバイスが多いので、コンセントはたくさんあった方がいいとか。実際私の家はたこあし配線だらけで非常に見映えが悪くなっている。なんとかしたい。
家選びと全く関係ないことも参考になった。私も著者と同じく乾燥肌でヒートテックが合わないので、ベルメゾンのホットコットを買ってみよう。
ただ、リビングでゴールデンボンバーさんの『めめしくて』を踊るのは不審なのでやめたほうがいい。私ならアンジュルムさんの『400億年LOVE』を踊る。
そしてパーティーがすごく楽しそう。ぜひ参加したい。かき氷、たこ焼きに流しそうめん。複数人でいるからこそ季節の行事を楽しめるのかもしれない。一人暮らしだとなかなかめんどうでこうはいかない。また、実家だとリビングはなんとなく親に気を使うが、ルームシェアの場合は完全に広い共用スペースとして使えるのが大きい。てかたこ焼きの季節っていつや。
季節のパーティーもいいけど、私ならホームシアターで推しの鑑賞会をするな。今でもカラオケのシアタールームでやっているが、それを自宅でできるなんて最高だ。わたしならこうする~といろいろ妄想を広げながら疑似ルームシェアできるのがこの本の素晴らしいところだ。
しかしこんなに愉快な生活を送っている著者も、永遠にルームシェアは難しいと考えているようだ。友達に介護をさせるわけにはいかない。人は同じスピードで老いるわけではない。私は自身がそのような対象になることが頭から抜けていた。独身同士で楽しく暮らすためには、健康であることが第一条件なのかもしれない。
まあ私の友達はどこまで本気なのか、私達に葬式をあげてほしいと言って、保険で葬式代の積み立てまで始めた。音楽は平井堅さんの「ポップスター」でと指定までしている。人生自体がポップな彼女なので、葬式もポップでいいのだろう。知らんけど。
もし末永く気兼ねなく友達同士で暮らしていくとなれば、そのあたりのことも元気なうちに行政や民間サービスに頼む準備までしておくことが必要になってくるのかもしれない。
私がこの本を読んだ感想はこんなところだ。私達のように結婚のケの字もなく☆、きっと友達とこのまま愉快に生きて行くんだろうな~という方々には一読をオススメする。そもそも結婚に重きを置いていない方だってたくさんいるだろう。まあ私は結婚したいのだが。好みのタイプは神木隆之介さんだ。
基本ふざけていらっしゃる(褒めている)のでサクサク読める。この星のどこかでこんなふうに面白おかしく暮らしている前例があることは希望と言えるだろう。私達の未来はきっと棺桶まで面白い。
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