『僕が旅人になった日』発売。 - それぞれの「#旅とわたし」 -
人生を世の中のせいにできるのは、いつまでだろう?
仕事を辞めた10日後。
私はひとり、スイスにいた。
この書き出しから始まる、"スイス1ヶ月ひとり旅" を綴ったnoteを、 #旅とわたし で投稿したのは、旅から帰国した直後の2019年6月だったと思う。
たくさんの応募の中から、ライツ社さんとTABIPPOさんに見つけ出してもらい、エッセイとして推敲を重ねたのちに掲載していただいた書籍、
「僕が旅人になった日」
が、本日9月16日、遂に発売された。
経験豊富な旅人たちや、すでにとても活躍されている方たちの中に混ざり、旅人として1冊の旅の本に携わる日が来るなんて。
大切に大切に紡いだ言葉が本となり、この手に取れる日が来るなんて。
初めて両手で持ってみたこの本はずっしり重くて、今更ながら「本っていいな」と思った。
心待ちにしていた発売日が、訪れた。
帯のメッセージが、冒頭のフォトエッセイが、強く、まっすぐ、深いところへ響く。
なんと、憧れの古性のちさんがそのフォトエッセイを担当されたそうだ。
だからこんなにも、惹き込まれたんだ。また1つ、夢が叶った。
旅が今までのようにできなくなった。
みんな、何かが予定通りにいかなくなった。
人の数だけさまざまな想いが、きっと、世界中に溢れた。
そんな今だから。
今だからこそ、なんだ。
「人生を世の中のせいにできるのは、いつまでだろう?」
読み終えるとまた、このメッセージが胸の奥を熱くした。
エッセイ執筆の経緯や想いを、発売とともに暑く長く書き記すことにした。
どうかどうか、1人でも多くの人へ、この素敵な本が届くことを願って。
傷と決意
スイス行きを決めたのは、長年の下積みを乗り越えて手に入れた仕事を、辞めようと決めた時だった。
悲しかった。期待に応えられなかった。自分を責めた。
積み重ねたものを、手放すのが怖かった。意地があった。
心無い言葉に、たくさん傷ついた。
それでも、こだわり続けたものを勇気を出して手放すことで、現状から踏み出そうと決めた。
自分を大切にすると決めた。
見栄や意地から解放して余計なものを削ぎ落とし、自分がどう在りたいのか、立ち止まって見つめ直そうと決めた。
あの時応募した、スイスでの旅を綴った「#旅とわたし」のnoteは、
"心を偽らずに生きていく"
と決めた、自分への決意表明だった。
旅へ出る
決めたことはひとつだけ。
「1人で、どこかへ行こう」
それだけだった。
そして、1枚の美しい湖の写真に出会った。
「ここに行こう」
すぐにそう決めた。そこは、スイスだった。
約1ヶ月、毎日お気に入りの川沿いや湖のそばで過ごした。
藁のベッドの農家さんちに泊まり、ハイジの世界を知った夜もあった。
トラブルももちろん、たくさんあったけれど。
徐々に思い出した、深呼吸の仕方。
ふと窓に映る自分の表情が、ほぐれていく日々。
そんな自分のこと、久しぶりに「あぁ、すきだな。」と思えたこと。
そんなひとり旅を、エッセイに詰め込んだ。
大塚さん
投稿したきっかけは、スイスから帰国してすぐのこと。
数年前にnoteの存在を教えてくれた、友人のなっちゃんから連絡が入った。
「さくらちゃん、これは書くしかないよ!」
すぐに企画を確認するためnoteを開き、かの有名なTABIPPOさんとライツ社さんが旅本を作ると知り、
「ほんとだ、書くしかないな!!」
と答えた。
現地でnoteに書いた日記をベースに、想いのまま勢いよく綴った。
担当してくれたライツ社編集長の大塚さんは、ものすごい人だった。
「いくらでも、とにかく書いてみてください!」
という大塚さんの言葉に甘え、帰国したばかりの旅のはずなのに、なんと10年前の自分のことまで遡り、でこぼこで長文の文章が仕上がった。
大塚さんはすべて読み込んだ後、1つ1つのエピソードを丁寧に掘り下げ、何が伝えたくて書いたのか、じっくりと一緒に、わたしの心の中から探してくれた。
なぜ10年前まで遡り、なぜスイスの旅と繋がったのか。
大塚さんと話すうちに、どんどんリンクしていった。
ひとりで過ごした1ヶ月のこの旅を、一緒に大切にしてもらえたような、たまらない感謝がこみ上げ続けた執筆期間だったし、今でもそうだ。
本のプロフェッショナルと出会ったんだ。見つけてもらえたことが、担当してもらえたことが、宝物だと本気で思う。
発売に寄せて
何度も何度も書いては消して。
煮詰まったり迷子になったときは、大塚さんに相談した。
そして投稿から1年を超え、たくさんの方々の技術や想いを総動員して世の中へ生まれたこの本は、書店に並び、ネットで発信された。
きっとまた、旅はできるようになるから。
それに、はるか遠くへ行くことだけが旅ではない、とも思う。
もちろん「遠い」ことの果てしない良さも噛み締めているんだけど。
いつもの散歩道だって、顔を上げれば新しい景色が広がっていて、
下を向けば、見過ごしていた何かを見つけるかもしれない。
人生のさまざまな場面での決断が、もうその人の旅の始まりかもしれない。
みんながそれぞれの「自分の旅」へ踏み出すその時に、きっと勇気をくれる本だから。
どうか、届きますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?