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短編小説

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これまでに書いた短編小説をまとめています。
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#自由詩

ショートショート  | くすぐったい

空に向けて思いっきり手を伸ばしてみた。 そこには太陽があって 指の間から光が差してくる。 しばらくそこに寝そべって 両手を上に向けていた。 白いシャツを着たイーサンも 私と同じ動きをしている。 空に向けて両手を上げて、 太陽の光を手のひらで受けていた。 ときどき指の間から太陽の光が差して、 彼は眩しそうに目にしわを寄せた。 洗濯した後のシャツの匂いなのか、 それとも彼の匂いなのか。 私はその匂いに夢中になった。 太陽の光は相変わらず注いでいて、 甘酸っぱい匂い

流れ星

女の子が泣いているのを 僕はこっそり見ていた。 その涙はやがて川になり、 夜の星のしずくとなった。 小さな粒が夜空に向かい、 そのあと金色に輝いた。 涼しい夜風がそれを左右に揺らしながら、 ゆっくり空へと流れていったのだ。 その静かな光景を目撃していたのは、 一体どのくらいのことだっただろう。 あの星も、この星も。 静かな夜の風景の中で、 僕たちに優しく光っていた。 女の子もそれに気づいたようで、 目を真っ赤にしながら空を見ていた。 うるうるした瞳に、 無数の

短編小説 | 海賊船

クラシックバレーの発表会終了後、振り付けを間違えてしまった妹のもとへお兄ちゃんはすぐさま駆けつけました。 そして妹にこう言ったのです。 「お前が一番綺麗だったよ!」と。 * 郵便局で働くフェルナンドは、残業の依頼を進んで引き受けました。 今度の週末は土曜日も日曜日も働く予定です。 すべては美しい恋人ルイーゼのため。 あのダイヤモンドの指輪を購入し、ルイーゼにプロポーズするのです。 ルイーゼはなんと言うだろうか。 ダイヤモンドの指輪を見た時にどんな顔をするだろ