#06 外国文学
私は、公言するほどではないけれどそこそこ本を読むのが好きで、
空き時間はすべて読書に費やす!といったタイプの人間ではないけれど、
本はだいたいカバンの中に入っているし、
大好きなクラシック音楽をかけて、スマホを機内モードにして、
紙の上を流れる文章と向き合う時間を作るのが好きだ。
ここ最近、興味をそそられる本のジャンルに、「外国文学」が追加された。
以前よりも敬意と親しみをもって読めるようになったからである。
おそらくこれは、私の少し変わった大学での勉強が影響しているのではないかと思う。
「スペイン語を専門に学ぶ大学に在籍しています」というと、大概の人は、
「スペイン語ペラペラなんですか?」と返事をしてくれる。
もちろん言語を学ぶ上で、話すスキルを身に付けるのはひとつの目標であり大切な側面であることは間違いないけれど、
少なくとも私の肌感覚では、この五年間はスペイン語を日本語に訳す、いわゆる和訳を集中的に行ってきたと思う。
小説や戯曲といった様々なジャンルの作品の和訳、歴史や文法のスペイン語の専門書の和訳などなど…。
約一年間スペインに留学し、ある程度スペイン語に自信をもって帰国した。しかし、普段の授業に戻り和訳課題を渡された際、
難解な文章であれ何であれ、「平易なわかりやすい日本語に訳す」という作業の難しさを、改めて強く実感したことを覚えている。
…とここまで、私の大学での経験を語ってきたけれど(笑)、
要するに、「外国語で書かれた文章を、翻訳者が仲介して、私のもとに届く」ということの素晴らしさを、
この5年で感じるようになったと言いたいのだ。
私の場合、日本語に訳してくれる人がいなければ、この作品に出会うことはなかったのか…なんて思うわけで。
スペイン語をひたすら和訳するという5年間を過ごしたからこその気づき。
以前は、カタカナの名前覚えにくいとかいう理由で敬遠してたけれど、
これからも世界の言葉の文学に触れていけたらいいな。
「何読んでそう考えたの?」って思う方もいらっしゃる気がするので、
お気に入りの1冊をご紹介。
9つの短編からなる小説。作者は、両親ともにカルカッタ出身で幼少期に渡米し英語で小説を書いている。「他者の視点」を巧みに使い、細かな感情の動きや関係の変化を丁寧に描いている印象を受けた。決してドラスティックな展開の話は収録されておらず、淡々と、日々の出来事が記されている。まるで自分が経験したことがあるような、はたまたこれから自分が経験するのではないだろうかと思ってしまうような、それくらいありふれた日常。
簡潔かつエッセンスぎゅうぎゅうの日本語に訳されていて、とても読みやすい。すごい翻訳。
日本では決して有名な作家ではないだろうし、掘り出し物感があったので、自分のものだけにしまっておきたい気持ちもあるのだけれど、
ぜひ皆さんにも読んでほしくて思い切って紹介しちゃった。
今日はちょっとテイストの違う投稿でしたとさ。