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「もう感謝するのには遅すぎるけど」〜『アルプス席の母』を読んで〜
読書感想文です。
『アルプス席の母』
著:早見和真さん
簡単なあらすじから。
主人公は、甲子園を目指し高校野球に熱中する高校生!ではなく、その母。
基本的に、その母目線の語り口で物語が進んでいく。
高校受験の進路決定から高校卒業後あたりまでの時間軸。いわゆる、思春期。
未だにあるのか分からないが、数年前まで当たり前にあった体罰・いじめ文化、高校野球を支える父母会にまつわるあれこれ、そして、母と子。
たった、3年、されど3年を描いた奮闘記。
アルプス席の母から見えたものは。
感じたことは3点。
1点目。読み終えた後、まず、率直に思ったのは、これまで、家族が僕を支えてくれた全ての行動や想いって、絶対に全部見えてないということです。
そして、その逆も然り、高校生になると思ったより一緒に過ごす時間が短くなり、今まで、親は子の、子は親の、全てを知っているという思いの延長で3年間を過ごすとそりゃ痛い目に遭うよなと感じた。
互いに、そばにいるだけが優しさじゃないライフステージだよなと認識できた。
僕自身、種目は違えど、これまでサッカーに多くの時間を割いてきて、自分が知らないところで本当にたくさんのサポートを受けさせていただいた。
当時は本当に何も考えずにただひたすら目の前の練習や試合に必死に取り組むだけだった。
ちょうどこの年末、帰省した時に、高校時代に連れてっていただいた海外遠征にかかった費用の話をした。
想像の倍以上の金額だった。
感謝しかない。
そんな息子の野球に取り組む姿勢・思いと当時の記憶が重なり、感謝するには遅すぎる家族の支えに胸打たれる物語でした。
2点目。舞台は、横浜にある中学から、大阪は羽曳野市にある高校へと移る流れだった。
僕自身、大学が同じく関東の筑波から卒業後、大阪のクラブに就職することになった。
同じ日本でも文化の違いが分かりやすい関東↔︎関西の移動によって受けるカルチャーショックにとても共感した。
まず、羽曳野市と文字で見た時、大阪に住んでなかったら正直、読めてなかったと思う。笑
【ハビキノ】です。
人間関係も、半歩遠い関東、半歩近い関西と表現されているのもとてもしっくりきた。(実際には、関東出身の母が、「関西を半歩近い」と表現しただけ。)僕自身、どちらの良さも経験しているので、上手な言語化だと思った。
舞台が大阪だとは知らずに手を取った本だったので、思わぬところで自分の経験と近い話にたびたび共感せざるを得なかった。
最後に、3点目。
表紙をめくったらすぐに、『本当は女の子のお母さんになりたかったーーー』と書かれていることに触れたい。
これに関しては別に自分が男だったからというネガティブな感覚ではなくて、シンプルに、自分の両親が、女の子2人姉妹の両親だったらどんな感じなんだろうととても興味が湧いた。
櫻庭家は僕が長男の男2人兄弟だ。
家族で温泉に行けば1対3になる。
ただ、自分が神様になってなんでもできるなら、一度、その世界線を見てみたいなと思った。
全く想像つかない世界なので、心の中にしまっておきます。
想像はタダなので、いくらでも。なんでも。です。
以上、『アルプス席の母』の感想でした。
いつも映画や小説を見終えた後は、いろんな人の感想を読み漁るので、最近は、自分も発信してみてます。
どこかの誰かに届きますように。
本読むJリーガー櫻庭立樹より
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