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黄金の荒野を拓く@宇宙ビジョン作家人響三九楽(ヒビキサクラ)
2020年9月12日 20:23
女で生きていく覚悟を決める突然天秀尼を失った私は、片方の翼をもがれた鳥のようにエネルギーを失った。彼女がいたからこそ、共に手を取り合い、女性の救済に向けて力を注げた。その場所として東慶寺だった。私と彼女は母と娘というだけでなく、同じ志を持つ同士としての絆でも無すまれていた。かけがえのない同志を失ったのは、夫や子を失った時とはちがう、帰る家を失った子供のように寂寞とした気持ちだった。彼女
2020年9月11日 17:08
すべては光と影の表裏一体その後、私は東慶寺をよりよい寺にしたいと考えた。そこで目をつけたのが東慶寺の伽藍だった。東慶寺の伽藍は古びて、腐りかけていたの。伽藍とは、皆が集まり仏の道を説きながら修行する場所。言わば、東慶寺の「顔」となるメインスペース。そこが汚く古びていたら、東慶寺のイメージが悪い。だからこそ加藤明成にも見下され、攻め入る隙を与えてしまったのね。私はこの伽藍を女性の救済の役に
2020年9月4日 17:55
今この時、やりたいことをやる江戸に帰ってきた。十年ぶりの江戸は、人も町もわいわい活気があってビックリした。のんびりした播磨や播磨弁に慣れていた勝姫は、人の多さや言葉のちがいに目を真ん丸に見開き、首をあっちこっちに向け興奮していたわ。その様子がおかしくて抱きしめたいほど可愛くて、クスクス笑ってしまった。勝姫はそんな私におかまいなく、真っ赤な頬で外の景色から目を離さず言った。「お母さま、
2020年9月3日 18:50
今の自分を超えたい!忠刻ダーリンを失った本多家は、跡取りを弟の政朝様が継ぐことに決まった。私は勝姫を連れ、政朝様にお祝いの挨拶に行った。おめでとうございます、と頭を下げた私に政朝様は恐縮し、笑顔で言った。「義姉上、いつまでもこの姫路城に留まり下さい」政朝様も忠刻ダーリンに似て心優しい方なの。政朝様のすぐ横に座っていた義父上は、最愛の妻熊ママを失いげっそりとやつれていた。そして勝姫を手招