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冬の実

母のふるさとから
冬の実を とってきた

母は 思い出をえらんで
現実の この場所へは もう 来ないという
だから 実を とってきた 冬の実を
それから まだ つぼみの 椿のひと枝を

母は つぼみの枝を さっと抱いて
冬の実は みな 私にくれた

過去の思い出ばかり えらんできた母が
咲くかもしれない未来を いま 胸に抱いている

満足して 私は
冬の実たちを 袋へ入れた

なつめ なんてん あおつづらふじ
からすうり いまだ あかあかと

母と わかれ ひとり帰る

のびゆけ 冬の実
夜の道を照らせ



2022.12.24 一陽来復