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【批評】モンスターハンターは死んだ

はじめに

長らく、モンスターハンターワールドに対する評価を下しかねていた。
一旦は、時代についていけず、「私は懐古主義者だったんだ」というネガティブな自己嫌悪に陥ったりもしたが、アイスボーンの発売を経て、合計約500時間に渡ってプレイした今、もう一度、このゲームに決着をつけたいと想い、筆を執った。至って冷静に、時間をかけて考え抜いた、モンスターハンターワールドと私の決着を付ける、大切な文章だ。
ひとつ勘違いしてない欲しいのが、今このゲームを楽しんでいる人らを貶める目的は毛頭ないということ。このゲームにもたくさんの魅力がある。そうでなければ500時間もプレイできない。ここでお話するのは、モンスターハンターが「ワールド」で決定的に変わってしまったことと、その問題点、今後の展開についてだ。

モンスターハンターのダンス

私はこのゲームの核はアクションにあったと捉えている。武器を手に取り、強大な自然と、モンスターに、自らの腕で立ち向かっていく感覚に、厳かさすら感じていた。
そのアクションとは、実際にどういうものだったのだろうか。
揶揄されがちな、回復薬を飲むたびにガッツポーズをすることや、振りが遅く隙だらけの攻撃を繰り出すハンターが、それに該当するのか。
違う、それは本質ではない。モンハンの本質は、

「モンスターとハンターのダンス」

これだ。
このダンスが如何に面白いかが、モンハンの要だ。
ではそのダンスが何故面白かったのか。

それは圧倒的に高い難易度に1つ目の要因がある。
圧倒的に強いモンスターと戦う上で、何をすべきか?
装備を整える?武器を強化する?スキルを見直す?
まぁそういう考え方もあって良い、だが、それは君の強さではなく、装備の強さだ。
本当の強さは、例え装備や武器が、スキルが最低限でも太刀打ちできる君の腕っぷしだ。モンハンってそういうゲームだったろう?
そのために、まず何をするのか。「モンスターと同じ空間を共有する」のだ。如何にモンスターのそばにいて、隙を見つけて攻撃を叩き込めるか。
これがモンスターとのダンスだ。この「空間共有」の楽しさが、ワールド以降圧倒的に足りていない。

2つ目は、ゲームスピードだ。時代の流れというのはわかる。
ゲームスピードは早くしなきゃいけないし、初っ端から高難易度で出鼻をくじいては、ライトユーザーが離れてしまう。そうすると、ハンターも、モンスターも、動きが早くなる。見切って反撃したり、背中で立体機動してみたり、インスタ映えしそうな「それっぽい」アクションが増えていくのだ。
それらのアクション自体は、見ていてとてもかっこよいし、見切って反撃を叩き込んだときは楽しい。だが、ここが問題なんだ。「たいして強くない」モンスターを、「わけもわからないけどカッコよく倒している」。
この低難易度化が、ワールドの面白くないところだ。
空間共有する余地を与えずに、モンスターは容易く倒れていく。
これまではハンターに対して圧倒的に強大な存在であったモンスターが、そうではなくなってしまった。

数字を追うゲームへ

ところが、ゲームクリア後の追加モンスターは極端に強くなる。
それらのモンスターへの対抗策が、「数字」(スキル)というのがまた、大きな問題だ。今作の「珠」システムは、ポータブル3rdのお守りシステムより悪い。
珠によって安直にスキルを組めることになり、ハンターがスキルを極端にたくさん持てるようになってしまった。しかも、珠は運次第だ。運でスキルを手に入れるというのは、アクションゲームの中であってはならないものではないだろうか。
ある程度の制約はあれど、びっくりするくらい多くのスキルを持てる。
これも「腕っぷし」と関係ない。実力の必要ないゲームになってしまったポイントだ。
狩猟する最大の手段であった「武器を振るう」ことが、「数字を降らせる」ことにすり替わってしまったのだ。「武器を振るう」アクションが、オマケレベルに成り下がってしまったわけだ。
逆に、スキルを組む楽しさの幅はとてつもなく大きく広がったことは事実だ。「ビルド」という言葉さえ使えてしまうようなスキルシステムは、悩んでいて楽しいものではある。

最悪のシステム「クラッチクロ―」

次に、クラッチクロ―という、モンハン史上最悪のシステムについて話そう。
先程、「モンスターとハンターのダンスが大切だ」という話をしたが、クラッチクロ―は、このダンスをしている最中に「失礼、髪に芋けんぴが付いていますよ」と言うような、しょーもないアクションになっている。
クラッチクロ―による「傷付け」と「壁当て」は、モンスターのHPを削る方法としての選択肢の一つではなく、必須レベルのシステムにしてしまっている。これらを「しなければならない」、そもそも飛びつける程の隙があるモンスターはいない。
そうすると、みんなが転身の装衣を着て飛びつく。あまりにも滑稽で個性のない、開発者の自己満足のようなプレイングを強いられることになる。せめてどの部位でもふっとばしへ派生できれば良い。どの部位でも、その方向に対応した壁へ当てられるようにすればまだアクション性があった。頭に張り付くことを強制してしまったのは大きな失敗だ。

そもそも飛びつくアクションが面白く感じないし、「武器で攻撃する」というベースのアクションに欠片も紐付かず、独立したアクションになってしまっているのが一番の問題で、この「ベースのアクションとの剥離」は、純粋なアクション拡張とは言えない。アクションゲームとして致命的な欠点であることは明白だろう。
私は、もっと純粋なアクション体験の向上を求めていた。
安直に武器のアクションを増やすのではなく、コンボの多様性や、同じ武器でも様々なプレイスタイルが許されるような、幅の広い遊び方を提供して欲しかった。

中途半端な運営方針

また、中途半端な「売り切り型」「運営型」のバランスについても触れておく必要がある。
(これはまぁ、ギルドクエストが導入されたMH4Gのときからの問題だが、ワールドで顕著になった)
ムフェト・ジーヴァもマム・タロトも、いわゆる「生産武器」が一瞬でゴミになるデザインをどうにかする気は甚だないらしいのが悲しい。せっかく作ったカッコ良い飛竜刀がゴミになるのは悲しすぎる。
そもそも、モンハンはハクスラ的収集要素との相性が著しく悪い。どうしても作業感が出てしまうし、特にムフェト・ジーヴァはマルチプレイでないと装備を集めるのは非常に難しいのが実情だ。ゲームの人口によって難しくなってしまうのはよくない。平日のお昼にしか遊ぶ時間が取れない人も多いだろうが、彼らはムフェト武器を手に入れるのが非常に難しいはずだ。
継続運営型のゲームデザインをするなら、中途半端なことはしないで欲しい。一定の盛り上がりを保つためにエンドコンテンツを導入したい気持ちもわかるが、それであればもっと練り込んだシステムを作るべきだ。
また、一向に進化しないインターフェースも大きな問題だろう。
武器を変えるときに、ひと目見てどれがどれだかわからないし、カテゴリでわけられてるわけでもない珠の管理は煩わしい。
更に、ゲーム内で説明されないシステムが多すぎる。何故Wikiを見る前提のゲームを作ってしまうのか。フレンドから聞いて「え、そんなの説明あったっけ」「げーむうぃずに書いてあったよ」というのが多すぎる。スキル説明でも「一定の条件で~」という文言すら見られる。なんだよ、一定の条件って。そういうのを見つけるゲーム性用意してないなら最初から書いとけよ。
ハンターノートやインターフェースでの説明不足が多く見られ、スマホをそばに置いておかないとわからないことが多すぎるのは、大きな問題ではないだろうか。
もしそういうゲームにしたいのなら、プレイヤー同士のコミュニケーションを促すようなオンライン専用のエリアを作って、(集会エリアのようなものではなく、ロックラックやミナガルデのような場所)オンラインゲーム寄りのデザインにするべきだ。

結論

結論としては、腕っぷしやモンスターを狩猟する実力がさほど求められなくなってしまい、数字やスキルを追い求めるだけのゲームになってしまったこと。そして、それを取り巻くデザインがあまりにも中途半端になっていることが、とても残念ということだ。

私はこれにてMHWとの決着をつけた。
モンスターハンターは、アクションゲームではなくなってしまった。

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