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書籍:「わかる」技術

「わかる」とは、どういった状態を指すのでしょうか。

「わかる」について解説した後、「わかる」ための技術を解説している書籍がこちらです。

著者の畑村洋太郎さんは東京大学の名誉教授で、『失敗学のすすめ』に代表されるような失敗に関する書籍を多数出版されています。

今回、書籍『「わかる」技術』(2005年出版)からの学びを記載いたします。

「わかる」とは

要素と構造のテンプレートとの一致

世の中のものは、「要素」が組み合わさった「構造」で出来ていると言えます。
そして、人間は「要素」と「構造」をテンプレートとして把握しています。

この「要素」と「構造」にどれだけ近いかで、ものごとを理解しようとします。

例えば、「りんご」であれば「表面が赤い」「形は丸い」「中身は白い」などの要素を持っています。

りんごには様々な品種がありますし、同じ品種でも形や味はバラバラですが、自分がしっている要素とおおまかに一致していれば「これはりんごだ」と理解します。

あるいは、「家」であれば、木造家屋やレンガの家、コンクリートの集合住宅などがあります。

これらは、素材やドアの形状などは様々ですが、「外部と内部で区切られている」「出入り口がある」などの構造が一致していることから、「これは家だ」と理解します。

このように「要素」と「構造」のテンプレートとの一致具合を見ながら、私達はものごとを理解しようとします。

新たなテンプレートの構築

「要素」と「構造」のテンプレートに一致しないものが出てきた時に、人間は、新たなテンプレートを構築します。
このとき「要素」と「構造」に分解しながら、テンプレートを構築します。

例えば「SNS」が登場したときに、「投稿」「フォロー」「コメント」のような要素を把握しながら、「自分が書いた投稿が他の人に見られる」「フォローしている人の投稿が流れてくる」「誰かの投稿にコメントをすることができる」「投稿をシェアすることができる」といった構造を把握していきます。

そして、この要素と構造を持っているものを「SNS」だと認識します。

その後、似たようなものが出てきたときに、その「SNS」のテンプレートを利用して解釈できるようになります。

この新たにテンプレートを構築する際にも、既存のテンプレートを活用しています。
なるべく近いものを探して、その物事を理解しようとします。

「インターネット」が登場したときには、多くの人が理解のために「テレビ」「ラジオ」「本」「郵便」「電話」などの既存の通信手段のテンプレートを参照しながら、新たに「インターネット」というテンプレートを組み上げていきました。

わからないもの

りんごやみかんのような物理的なモノは、要素や構造をテンプレートと当て込みやすいため、わかりやすいものが多いと言えます。

一方で「数学」や「哲学」のような概念的なものは、ピンとこないものが多いと思います。

これは頭の中にテンプレートができていないことが原因です。

例えば「分数」は「割り算」を理解していないと非常に難しいものです。
「XY座標」や「平方根」は、「少数」を理解していないと難しいでしょう。

書籍『ビリギャル』で、偏差値30だった主人公が小学生の算数からやりなおしたというエピソードがあります。
これは、算数や数学は、テンプレートのうえにテンプレートを重ねながら理解をしていくものだからと言えます。

テンプレートが無い状態でも、「公式」を丸暗記すれば問題は解くことができます。
しかし、公式丸暗記の場合、自分の中でテンプレートが出来上がっていない状態のため、「点数は取れたけどモヤモヤしてる」みたいな状態のままになります。

その状態で次の単元に向かうと、算数や数学で躓く事になります。

学校の教科書は(今は違うのかもしれませんが)、このテンプレートを作るのに必ずしも最適ではありません。
テンプレートを作るには、物事を多面的に見る機会が重要ですが、教科書は最も重要なロジックのみが記載されています。

※現在は、生成AIを活用して「小学生でもわかるように説明して」「この部分がわからないので別の例を出して」のようにしながら、多面的に理解を深めてテンプレート化しやすい状況になっているように思えます。

直観(アブダクション)でわかる

まれに、新しい概念や複雑な概念に向き合うときに、構造などがぱっとわかることがあります。
その「わかる」はあくまでも仮説レベルになりますが、「それってこうゆうこと?」ということがピンとくる場合があります。

このようなとき「直観」でわかると言います。

この直観でわかることは「アブダクション」とも呼ばれ、近年注目が集まっている概念でもあります。

直観でわかるとき、思考のショートカットが起きています。

通常、概念を理解する際には、「AならB、BならC、CならD」のようにロジックを組み合わせて理解していきます。
直観でわかるときは「AをみたらDがわかった」のようなジャンプが発生しています。

この思考のショートカット・ジャンプは、過去に関連するものについて思考を深めたときに発生します。


…と、このような「わかる」に関する説明が、第一章でされています。
他にも「暗記」の価値や限界についても書かれています。

その上で、第二章では、その「わかる」を技術として普段の生活に応用する方法について書かれています。

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