書籍:はずれ者が進化をつくる
こんにちは。
3人娘を育てている、ベンチャー企業のCTOです。
はずれ者が進化をつくる
植物学者の稲垣栄洋さんが書かれた「はずれ者が進化をつくる」を拝読しました。
個性や多様性について、植物学者の視点から語られた書籍です。
優生学
「優生学」という考え方があります。
優生学は、「遺伝的に優れている者が、遺伝子を残すことが、社会にとって良いことだよね(逆もまたしかり)」のような考え方と言えます。
その前提の元、実際に「良い遺伝子」とされたものを積極的に残す、あるいは「悪い遺伝子」とされたものを排除する試みも、かつては実践されていました。
この考えは、一時期、一定の評価を得て、(例えばナチス・ドイツなどで)支持されました。
しかし、様々な問題をはらんでいたことから、見直しが進んでいます。
社会学では、このようなスタンスを取りません。
人間と社会は多様性に富んだものであり、それぞれの地域にあわせた多種多様な社会文化が営まれるという前提のもと、研究が進められます。
生物学や植物学も、同様のスタンスを取っています。
植物学の視点での多様性
この書籍では、植物の世界の中での多様性の重要性を語っています。
生物・植物が生きている空間は、様々な環境があります。
それぞれの環境にあわせた淘汰圧がかかります。
その中では、種の存続のために多様性が重要となります。
この書籍では、その多様性の重要性を学びながら、「では人類にとっても多様性が重要なのでは」という問いを投げかけられます。
今回、この書籍の中からの学びを共有したいと思います。
「ふつう」の概念
人間の脳の限界
人は、短時間で記憶できるものの容量に限界があります。
例えば、7個前後(5〜9個くらい)のものを同時に覚えるのが限界と言われています。
「お買い物のお使い」をする際、メモを持たずに記憶だけを頼りにしようとすると、この7個前後が覚えられる限界と言えます。
あるいは、トランプからランダムに10枚取り出して、それを手元にバラバラとおいてあった際、それらを30秒で記憶して答える、ということをすると、なかなか覚えることは難しいでしょう。
(この特性を逆手にとった遊びが、トランプの神経衰弱ですね。)
人間の脳は「たくさん」が苦手です。
整理・ものさし
しかし、何かしらの整理をすることで、「たくさん」を処理できるようになります。
例えば、ランダムな数字でも、小さい順に並べると覚えやすくなります。
「8,3,2,7,5,1,9,8,4」という数字の列は覚えづらいと思います。
「1,2,3,4,6,7,8,8,9」と並べ替えると、一気に覚えやすくなります。
あるいは、同じものをグルーピングすることで、把握しやすくなります。
「砂糖、だいこん、ミネラルウォーター、きゃべつ、にんじん、牛乳、からし、こしょう」というものを、以下のようにグルーピングすると理解しやすくなります。
やさい
だいこん、きゃべつ、にんじん
飲み物
ミネラルウォーター、牛乳
調味料
砂糖、からし、こしょう
このように、人間は、並び替えやグルーピングによって物事をわかりやすく整理しています。
自然界は、複雑すぎて多様すぎるため、人間の脳が理解しきれません。
そのため、序列をつけることでわかりやすくします。
ふつう
その序列の中で、平均に近い存在を「ふつう」と呼びます。
先述の通り、人間は自然界の複雑さを理解することはできません。
そのため、物事を単純化して理解しようとします。
その過程で序列を作り、その序列の中での平均に近いものに「ふつう」といいうラベルをつけています。
しかし、自然界には「ふつう」という概念は存在しません。
あくまでも、人間の理解のために作り出した概念です。
はずれ者
この「ふつう」という概念は、物事の理解のために役に立つため、「ふつう」である状態を好みます。
ものごとが自分の理解の範疇に収まっていれば、人は安心します。
そのため、平均から離れた「はずれ者」を見ると、理解出来ないものとして排除したがります。
しかし、実際の自然界には「ふつう」も「はずれ者」もなく、あるのは「多様性」です。
はずれ者が進化をつくる
自然環境は、様々な要因によって変化します。
大陸移動、地軸の変化、気候変動などによって、生物の生活環境が変わっていきます。
そのような環境変化において、多様性が重要な役割を果たします。
はずれ者の個体が、変化した環境に適合した場合、その個体の特性がやがて平均(ふつう)となっていきます。
もし仮に、すべての個体が同じ特徴を持った生き物の場合、環境変化に耐えられずに絶滅してしまいます。
自然界において、多様性があること自体に、ものすごい価値があるのです。
…以上です。
書籍では、より「人の個性や多様性が重要」という視点に沿った記載がされています。
現在、ダイバーシティやインクルージョンが重要視されている社会に突入しました。
その社会の中で、思考のOSをアップデートするために、本書の内容を理解することが助けとなりそうです。