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集落再発見 上畑編③ 上畑と戌の満水
1742年、上畑村を襲った大洪水から281年が経つ。戌の満水と呼ばれ、毎年8月1日にはお墓参りが行われている。自福寺でも、春と秋には法要が行われている。自福寺は1702年上畑村に建立されたが、戌の満水で、流失した。33年後の1775年、現在の大門地区に再建されて現在に至る。
佐々木泰久さんは平成4年から2年間、上畑区の役員を務めた。ちょうど戌の満水から250年が経つ節目にあたり、当時の役員たちの総意で自福寺境内に地蔵菩薩を建立することを決めた。その意義の一部を抜粋して書き述べる。「自福寺の本尊が地蔵菩薩であることは知られていない。江戸時代には地蔵信仰が盛んであり、地蔵は人間の悩み、苦しみを身代わりになって救ってくれると信じられてきた。250年忌にあたり、本尊石像を奉納することに意義があると考える。」
戌の満水で上畑村が流失した歴史的事実は消えることはない。江戸時代に再建された自福寺と溺死者を弔う石碑が当時の面影を残している。
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文:西村 寛