容姿をめぐる女と男
Sakuです。
こんな人がいる。
童顔と老け顔のどっちが得かという話をしてきて、老け顔は若いころ老けて見られるけれど、顔が年に近づき、追い越していくと、今度は若く見られるのだそうだ。
童顔は、若いころから可愛らしく見られるが、その反面年をうまく重ねられず、「痛い中年」のような見た目になる。
私もその話をした人も、年上に見られることが多いという共通点があり、それでそういう話になった。
私は、いつか年が顔に追いつくとそういう良い面があるのかと発見した(25歳の今、近づきつつある)。
けれど、その人の「童顔な人」に対する気持ちは、憎らしさから出ているに違いないと思った。ただ童顔に生まれただけで、「痛い」だなんて言われて、職場の隅っこで内緒話みたいに面白がられるなんて。
その人は女だ。
私が髪をブリーチして派手に染めたとき、母と、姉に同じことを言われた。
「伸びたとき地毛とのさかいめが目立つだろうね」
同じようなニュアンスで言われるものだから、母娘、こんなにも似通うものかと面白くなった。
女は、こと容姿に対して、チクリチクリと刺してくる。
どんなに仲良し、心通い合っていてもである。
友人が痩せるのは悔しいし、姉妹が痩せるのはもっと悔しい。
新しい服や化粧品を、いいなあと言いながら、私より良いものを持つなんてという、嫉妬を羨望の中にごまかす。
母がいつも、太りやすい家系の父の姉妹をくさす。「食べる量が違うんだから。それに動かないし。人間、動かなきゃダメだね」
それは、もっともだけど、母が男なら、こんなに執拗に、毎回というくらいに私に話してはこないだろう。
男は、女の容姿に対しては、メルヘンに過ぎる。
私が髪を染めたのを見て、彼は、「伸びたとき」や「地毛とのさかいめ」なんて気にしない。「いくらだったか」「沁みたのか」も気にもしない。
ただ目の前にいる、今、イメージチェンジしてきた女を見る。
同棲を始めたとき、彼がワンピースをくれた。
黒いひざ丈のワンピースだったけど、肩のところにフリルがついていて、私は自分には似合わないと思った。甘すぎると思った。
そしてレシートを持っていって返品した。
彼と一緒に、ドラッグストアでなにげなく口紅を見ているとき、私が渋い色の、モカというような色味の口紅を選ぶと、彼はもっと鮮やかな、いかにもきらきらな女の子らしいものをすすめてきた。
7歳の女の子が、初めてお化粧をするときに塗るような色だ。
このさき彼が何か服をくれるにせよ、口紅をくれるにせよ、その色やデザインは私にはきっと甘すぎる。
男は、「女は良い匂いがして、ピンクで、きらきらだ」と思っている。
女は、自分より良い女をくさすし、良くない女にもライバル心を持つ。
そういうものだ。