メルニコフと交響的なまなざし
トッパンホールにて、アレクサンドル・メルニコフのピアノリサイタルを聴く。シューマンの交響的練習曲を中心に、まさに交響的な作品が、交響的な演奏によって繰り広げられる。たとえばラフマニノフの第1変奏、高音域で奏でられるバロック的な単音の羅列の途中で、いかづちのように放たれる低音の一撃は、まるでひと昔まえのドイツのオーケストラのコントラバスのように、激しい初速でもって旋律よりひとコンマ早いタイミングで奏される。自由にたゆたう旋律と、待ちきれずに放たれる低音。これをひとりの人間のう