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夜泣きという戦争が終わった話

本当に長かった。気が狂うかと思った。
もしくは既に狂っていたかもしれない。

息子を産んで1年4ヶ月を目前とした3月30日、
初めて、息子が20時から朝5時まで通しで寝た。

朝起きて、目が合う息子に
「頑張ったね。」と言った。
私達、頑張った。

新生児の頃の方がまだ楽だった。
3時間くらいの間隔だったし、
私はもちろんまだ仕事も復帰してなかった。
息子の身体も、ちょっと力を入れたら
壊れてしまうんじゃないかというくらい軽く、
泣き声も、今思えば 可愛い囁きだった。

当時はもちろん、
「子を育てるとは、人を育てるとは
こんなにも身を削るのか」と頭を抱えた。
体勢を変える度に激痛が走り、
とめどなく出る血(悪露)に苛まれる身体。
目を離した隙に死んでしまうのではと、
モロー反射のたびに目が覚めるほど
張り詰めた精神状況に、
この子が死ぬか私が死ぬかだなと
思っていた時もあった。
一方で半年もしたら落ち着くのだろうと
そんな楽観的な気持ちもあった。
お母さん、それはまだ序章に過ぎません。
当時の私に教えたい。

夫は、夜勤仕事なので夜は居ない。
暗い部屋でひとりと赤子で戦う日々は
覚悟はしていたものの、辛かった。

(それでも、起きれない夫が隣で寝てるより
期待しない分マシだったかもしれない)

近い月齢の周りの子が寝るようになるのを
耳にする度に不安と羨望と疲労が押し寄せた。

身体が大きくなるにつれ
意思がハッキリするにつれ
その大変さは増すのに
夜泣きはちっとも減らず
半年を過ぎても1時間に1度起きた。

ネットで調べて出てくることは全て試した。
夜間断乳もした。
1歳になった息子は、力も強くなり
抱いていても、落としてしまうんじゃないかというほど泣き叫びのけ反り
私の服を千切れるかと思う程引っ張って
母乳を欲しがる姿に、何度も叫んだ(私が)

もう嫌だ!寝てくれ!頼むから!

寝れない夜は息子も辛かろう。
わかっていても叫んでしまった。

ダメだと思い布団に降ろそうとしても
嫌だと必死にしがみついて
顔を私の胸に埋める息子を引き剥がし
寝室を出て、泣き叫ぶ息子の声を
遠くに感じながら
呆けて涙を流した夜が何度あったか。

生後9ヶ月から仕事復帰した私の体と精神は
緩やかに、確実に、限界に近づいていた。

元々、寝食忘れて仕事をするタイプだったので
自分には寝ないこと自体には耐性があると思っていたが、子を育てるとは、それだけではなかった。

殆ど夜通し泣き暴れ、細切れ睡眠で
まともに頭が回らない中で
(自宅保育なので)在宅仕事の日中も
隙あらば母乳を求められ しがみつき、
私の姿が一瞬でも視界から外れれば
これまたガラス割れるかと思うほど泣く息子。

どんなに眠れぬ夜でも
仕事は始まる。
普段しないようなミスをしても、
「寝れてる?」と聞かれる。
寝れていない、が、
案じられるのは叱られるよりキツい。

1歳2ヶ月を目前とした頃
自分と夫の仕事が繁忙期に入り、
ひょんなきっかけで私の心はポッキリ折れた。

何も考えたくない。

一時保育、保育園、仕事、キャリアアップ
夜泣き、家事、掃除、教育資金、老後資金、
考えるべきことはたくさんあったけど
もう何も考えられなかった。

数時間通しで眠れているのに、
少し仕事が忙しく帰りが遅くなり
睡眠時間が削られた程度で
眠そうな顔をする夫。

授乳をしてもらえないと泣き叫び
私に物を投げつけ、暴れる息子。

日々夫と息子に静かな憤りを抱え、
必死に笑顔を作り過ごし、
たまにふとしたきっかけで怒鳴り出す自分に、
もうダメだと思って実家に帰った。

家族は一緒にいるべきだと思って
なんとか耐えてきたが、
今の状況は確実に息子の為にならないと思った。
むしろ悪影響。
今思えば、もう少し早く決断してもよかった。

実家に帰ると、両親は歓迎してくれた。
「ノイローゼ気味じゃないの」と言われた。
あまり自覚はなかったが、
とりあえず夜泣きが辛いと伝えた。

最初の1週間は、日中別室で仕事をし
息子とは夜の寝かしつけ〜起床しか関わらなかった。
部屋を移動する時に、息子は泣き叫んだが
暫くすると気が逸れて遊び出す。
実母が面倒を見てくれていた。

3人育てたけど、こんなに難しくなかったわ。
1人目がこの子だったら3人欲しいと思えなかったかも、と言われた。
(たしか過去にも言われた)

母はなるべく私をひとりにしてくれた。
母乳で胸が張って痛むときだけ、
たまに仕事の隙間時間に授乳をしたが
基本的に会わずに授乳もしなかった。
数日で私の胸は張らなくなった。

次の週になると母が「発芽玄米食にしていい?」と聞いてきた。
発芽玄米は3歳以下非推奨らしい、が
食事は任せていたのと母を信用していたので、
快諾した。
便秘が気になると言っていた。

ちなみに離乳食が始まった生後5ヶ月の頃から、
息子は殆ど便秘だ。
3日に1回出れば良い方。
毎月の検診で相談しても、「完母ですと、水分不足になりやすいので なるべく水分とらせて」とか「離乳食の時期は便秘になりやすいので5日でなかったら浣腸して」とか言われるだけだった。
いくら水を飲ませようとしても、苦肉の策でジュースを渡しても、母乳をせがむので上手くいかなかった。

玄米食にしてから2日目、まるで離乳食期前みたいな便が出た。
柔らかく、玄米の籾殻みたいなものがたくさん出た。
排便時はいつも、硬くて肛門が切れて血が出ていて、泣きながら出していたので 驚いた。
玄米食になってから泣かずに出すようになった。

途端、食欲が倍増した。

今までは、どう試みても毎食数口しか食べなかったご飯をバクバク食べる。
信じられないほど食べる。
小腹がすくと自分で申告してくる。
バナナをやるとペロリと平らげる。
そして排便する。すごい。

快便と食欲モンスター化して
2週間ほど経った頃、
夜、泣いて起きることがなくなって
3時間ずつくらい寝るようになった。
起きても、ムクッと起き上がり
手を伸ばして抱っこを求めるくらいで
抱けばすぐに眠った。置いても起きない。

そのくらいから、私は同じ空間で仕事をして
日中を過ごすようになったが、
授乳をせがまれなくなった。
ただ、ずっと何か食べてるか飲んでいる。

今まで、便秘でお腹が気持ち悪かったから
ご飯を食べなかった?
不調だから母乳を欲しがっていた?
便秘が解消され、お腹がスッキリして
食欲が向上し 母乳である必要がなくなった?
お腹が膨れて腹持ちがいいので
夜眠るようになった?

そんな生活を続けて1ヶ月目
2024年3月30日
生後477日にして
息子は20時から朝5時まで
初めて通しで眠った。

私は専門家じゃないので、
ちゃんとした理由わからない。
でも終わった、と思う。
まだ1晩だけだけど。

息子との夜泣きの日々と
息子を育てた私の胸が
静かに終わりに向かっている。

夜が明けて、1番にあったのは
意外にも「寂しさ」だった。

よく頑張ったね、息子。
よく頑張ったよ、私。
協力してくれた母、ありがとう。

お母さんってやっぱりすごいよね。

この気持ちは、多分 夫には理解されない。

生後数ヶ月、まだ希望を持ってた頃
「卒乳の時泣いちゃうなぁ〜」と夫に言ったら
「え、なんで?」と言われた 笑

まあそうだよね。

なので、ここに書き残す。

血が出て痛かった授乳、
絶望して涙しながら見た月、
寝室から私を呼び泣く声、
辛くて叫んだあの日の私、
お疲れさん。

発芽玄米、すごいね。

おわり

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