愉快なエピソードトークとノスタルジーを両方味わえる 向田邦子『父の詫び状』
今回紹介する本は向田邦子さんのエッセイ、『父の詫び状』です。
この本の魅力は「ユーモア」と「なつかしさ」です。
子どものころ見えていた景色や、子ども時代に考えていたことを、大人になった作者の目線で生き生きと描いている作品で、「生活」を楽しんでいる作者の姿が目に浮かびます。
この本を読んでいると、自分の子供時代の風景が蘇ってきました。そのぐらい親近感を感じられる作品です。
例えば、子どもが寝た後、大人たちがこっそり食べ物を食べているのを偶然見てしまったという話があります。大人たちが子どもに見せない秘密を垣間見たこの時の感情には、僕自身も覚えがあります。
また、何でもない出来事をとても面白く紹介する部分もあります。
例えば、自分の家の電話に入っていた留守番電話の内容や、今まで出会ってきた個性的なタクシー運転手のことをテンポよく語っており、面白くてページをめくる手が止まりませんでした。
僕は近所の面白い話をしてくれる女性の話を聞いているような気分でこの本を読むことができました。
この本はいい息抜きにもなると思います。
ぜひ手にとってみてください。