【新米パパママにおすすめ】公認心理師が教える/幼児健診の歩き方/1歳半健診編#8「遊び」
こんにちは!
幼児健診の歩き方ナビゲーターの
のびしろ丸です。
1歳半健診編8回目の今日のテーマは、私たち発達心理相談員が発達状況をみるうえで
最も重視する「遊び」についてご案内します。
子どもの遊びは、たくさんのことを私たちに教えてくれます。
「遊び」をみれば、子どもがわかる。
と言っても過言ではありません。
今回は少し範囲を広げて、乳児期から2歳頃までの遊びについても触れていきたいと思います。
どんな遊びをするか
自治体ごとに、幼児健診の問診票は様式が異なります。
発達面を問う質問の数も内容も、バラつきがあります。
遊びを尋ねる質問項目がない自治体もあるかもしれません。
ですが、「どんな遊びをするか」は、必ず聞かれると言っていいでしょう。
私の所属する自治体の問診票では、
Q.どんな遊びが好きですか。
(具体的に)
回答は、自由記述式です。
水遊び、シャボン玉、いないいないばあ
滑り台、追いかけっこ、階段上り下り、
ボール、おままごと、積み木、
音の鳴るおもちゃで遊ぶ、絵本を見る、
歌、ダンス、手遊び、お絵かき‥
(↑今月(令和5年2月現在)の1歳半健診に来た子どもの問診票の回答から一部抜粋)
1歳を過ぎると
知覚や運動の発達にともない、それまでの乳児期には見られなかった遊びの段階に入っていきます。
健診に来た子どもが「1歳半としての遊びの段階」にあると判断するには、下記の3つのポイントを満たしていることが要件になります。
①道具
手の巧緻性が高まるにつれて
子どもは物を操作する楽しさに目覚めます。
#5「手の運動」でお伝えした通り、
日常のなかの身近な道具のコップやスプーンを扱えるようになってきた子どもは、遊びのなかにも徐々に道具を取り入れるようになります。
それによって、子どもの遊びにより広がりが出てきます。
道具を好んで持っていても、持ち歩く、舐めるだけでは道具の遊びの段階にはまだ達してません。
道具を道具として(道具的に)扱っていること、
道具を目的に適った使い方をしていることがポイントです。
道具的な遊びの例として、
◯おままごとの包丁で食べ物の玩具を切ろうとする
◯鍋などの入れ物の中に玩具の食べ物を入れてお玉でかき混ぜる
◯ボールを転がしてボウリングのピンを倒そうとする
などが挙げられます。
「微細運動の発達」に「道具の理解」が加わってはじめて「道具的使用」が可能になると言えるでしょう。
②やりとり
2つ目は、道具の交換(=やりとり)です。
道具を介して人とやりとりする遊びを
イメージしてみてください。
ボール遊びを例にとりましょう。
ボール(道具)を持った子どもが大人(人)と向き合い、大人に向かってボールを転がします。
キャッチした大人が子どもに転がし返します。
これが複数回繰り返されたとき、道具を介して人とやりとりする遊びが成立します。
ボールを一人で好きな方向に投げるだけならば、それはやりとりではなく一人遊びの段階です。
一人遊びそのものがいけないということはありません。
子どもの遊びの引き出しを増やして
その幅を広げていくには、大人が積極的に関わっていくことが望ましいのです。
大人が介入することで遊びに関心を寄せてきたら、遊び方を工夫してやりとりにつなげていくように促していきましょう。
③テーマを共有する
先ほど例に挙げたボール遊びは、自分と相手の間にボールを行き来させる転がし合いっこです。
そこでは、一つのボール(道具)を相手と共有しますが、互いに投げ合うという遊びのテーマも共有しています。
これを三項関係と言います。
道具を交換する遊びがやりとりとして続いていくのは、お互いにあらかじめ了解されたテーマ(=転がし合う)を共有しているからです。
相手が転がすことを期待して待つ、
待っている相手を確かめて転がす…。
適切な距離を保ちながらやりとりが成立するのは相手と同じテーマの共有があってこそ、なのです。
三項関係とは
三項関係とは、自分と相手と物(テーマ)との三項のコミュケーションです。
三項があるということは、その前の段階にニ項があることになります。
二項の遊びは、乳児期によく見られる
物を含めない子どもと大人の直接的な関わり合いです。
刺激ー反応の二項関係の代表的な遊びには、「いないいないばあ」、「高い高い」などがあります。
今シリーズの#2「視線」では、共同注視や視線追従、社会的参照についてお伝えしていましたが、それらも「三項関係」です。↓
個人差はありますが、乳児期の後半の9か月ごろに、子どものなかで三項関係が成立するとされています。
(これを9ヶ月革命と言います)
それが遊びに反映されていくのが、概ね1歳半頃なのです。
つまり、子どもが1歳半の遊びの段階に入っているどうかは、三項関係が遊びのなかに現われ出ているかによると言っていいでしょう。
見立て遊び
遊びの中に三項関係が見られてやりとりをするようになった子どもの遊びは、次はどんな展開を見せるのでしょうか。
道具を別の物に見立てる遊びが次の遊びの段階です。
これを「見立て」と言います。
◯積み木を電車に見立てて走らせる
◯白く丸めた紙の一部を黒く塗って「おにぎり」に見立てて、食べる振りをする
◯ブロックを複数個くっつけて立方体にしたものを作り、「おうち」と教えてくれる
これらはすべて「見立て」遊びです。
発達が進むにつれて、そのバリエーションはより細やかに豊かになっていきます。
個人差はありますが、見立て遊びは、早ければ1歳半過ぎから現れ始めます。
概ね2歳には、遊びのなかに見られるようになります。
本物ではなく玩具で
先ほどの①道具ですが、例に挙げた遊びはすべて玩具で遊んでいることがポイントになります。
包丁、玩具の食べ物、鍋、お玉、ボウリングのピン。
これらはすべて本物ではなく、子供用の玩具の使用であることが前提です。
ここにおいてすでに、本物ではないものを本物の道具として見立てて使う「見立てる力」の萌芽を見て取ることができると言えるでしょう。
最後に
1歳半健診では、様々な発達面の相談を受けています。
その際は、親御さんから普段のお子さんの遊びの様子について、詳しく聞かせていただいています。
そのうえで、皆様方に共通してお伝えしていることがあります。
それは、子どもの興味関心を満たしながら、大人が関わり合ってやりとりをする遊びへの働きかけです。
遊びにおけるやりとりは即ちコミュニケーションであり、その積み重ねがベースになって、対人コミュニケーションの力を促し支えるものになりうるからです。
最後までお読みいただきましてありがとうございます!
次回#9は、「人への関心」をテーマにお送りする予定です。
お楽しみに!
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