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【詩】ありのままの事実

海外に行くために貯めたはずの金だった
コロナ禍なんて誰が想像しただろう

世の中が混沌とする中 大学を卒業した
ぐるぐる先がみえないくらがりで働いたり芝居して 
毎月訪れるからだの痛みは どうにかこうにかやりすごそうとした

ある日ふいに利き手が動かなくなった
わたしはついに病になりはてた 
無職に舞い戻り ふらふら
通帳は気づいたらずいぶんあの頃よりお金が減っている

夢を叶えるために金が必要だ
ああよかったまだ足りる

だけどもう海外旅行なんて行けないな
どうせコロナだし 何のためためたんだっけ
ずいぶん無神経で乱暴な響き

この数年で多くのことが変わり
もちろんいいこともあったさ でも、
わたしの足はあの日々ほど自由ではなくなった 
利き手だけでなく不自由になった片足で 
海を渡るのが夢のまた夢になってしまった

年金だけで案外と、描いた夢が難しくなるほど金が減る
嘘。悲しくて痛くてやけくそに買った本とかそのへんに転がってるだろ
事実をみないふりしてむげに使ったお金たちがいくつもあるだろ

原因不明だし、いつどうなっていくかもわからないままの身体だし
わたしがわるいのかなって怖かった
物ばかり増えてしまった部屋だね
へたくそだな 生活するの

元気になったら稼げばいいんだっていつだいつだ いつ治るんだ
「この病気は難治性です」
なんだよそれは
「平均休職期間は三年です。予後は人によって異なります」
わたしは平均じゃなかった。なれなかった

「夢を早く叶えて恩返しする」
単純で希望に満ちたことが努力でどうにもならない健康によって阻まれるの癪でたまらねえ 
言い訳に聞こえるか それでもこの身体の弱さは抱えるには結構重荷で 
だけど大切な人が言ってた、腹をくくれという言葉
なかったことにするの絶対嫌だから 
運命に仕返ししたい尖った気持ちもまだあるな 
でもやさしい運命知ってるから 復讐する気になれないなぁ
あっかんべして前に進みたいだけ

あなたに会えたとか 夢をみつけたとか 
その事実一つで衣食住できるわけじゃない、当たり前だそんなの 
だけどだけど 魂はそれだけで きっと誰より無敵で 
その事実忘れちゃならねえんだ

へらしちゃったぶんのお金取り戻せ 夢を語って増やしてけ 
甘っちょろい生き方してきたのわかってる 
だけど譲れなかったから 
ぐしゃぐしゃ握りつぶしても手放せなかった絶望は 
もともとは追い求め掴みたかった、夢という名の希望でした
綺麗事だけど本当だよ、
本気でそれしか信じてなかったあの頃の私には戻れない  
それでも厳しい世界その身ひとつで切り開いていったあなたのように
いつか大人になって隣にたつの それまで何があっても離さない 
その先もずっとずっと離さない

貯金通帳眺めて落ち込んでる場合か
大切にあるものすくいとれ 失ったもの勘定してんじゃねえ
不恰好でかまわないからわずかな小銭さえ大切にこれからを生きていくのだ

戯言はけるのお前が恵まれているからだよ、と
耳元で囁くわずらわしい声ふと降りてくる 
うっせーばーか わたしの人生だろふざけんな

負けるな 今ここにあるカードに 負い目を感じている暇がありゃ手を動かせ
もらったものを申し訳なく思うな 病になったなら自分は仕方ないと諦めるな
まだ自由な右手と右足残ってて お前の利き手はもう右みたいなもんだろ

たくましく生きろ生きろ生きろ ただ生きていてくれ
誇りもっていい もてよ
他には何ももたなくても 歩けるからそれでいい いいんだよ

出口みえない 一生きっとそう だからがんばれる 息がしたくなる 
この世界ですきな場所に行くために 

恥ずかしいなんて気後れする前に 最高の景色みせてやるから 
「わたし」を信じて欲しいんだ
時間かかるけど あんたが望んだところに連れて行くからきっと
約束する。
休んで大丈夫 またすすめる 
すこやかな呼吸と共に歩いていけ
ああ、でもさ、息切れする前に立ち止まれ 
よく頑張ったよな がんばってるよ
ちょっと座って今見える景色も抱きしめてやれ
走れないからさ、いっぱい座って歩いたその道の先で たどりつく
最っ高の世界描いて 未来を夢を何度ころげおちそうでも 掴みとれ
ただ、それだけを忘れないでいて欲しい。

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桜
現在療養中、無職なう!サポートいただけると大変励みになり、心が喜び駆け回ります。いただいたお金は日々の表現活動費(舞台を企画する際の制作費用など)や生きるための力(交通費や夢のため貯金など)にしますので、何卒…!!