【詩】いきたい
18歳のお前を
ずっと厭わしく思っていたよ
魂まるごと 呪いたくなるほど
消えたいという衝動は 一過性のもので
その気はないのに 首に手を当てた
未来を唱える恐怖に打ちのめされて
お前は夢を語らなくなった
だからいなくなっちまえと
心の臓の片隅に沈む希望は
握りつぶすことに決めたのだろう
しかし突き立てたはずの刃は
うまくは刺さりきらず お前を苦しめた
動かずに抜けないそれを
お前はどうするというのだろう
ただ、冬がすぎた
いくつもすぎていった
お前が嘆きを数えるあいだに
2000以上の遠い星月夜が降っていく 去っていく
さあどうする?
どうやらお前は悲しみを数え飽きて
私の意地の悪い問いかけに気づいたようだ
ああ 拾うのか みつめるのか
まるで戦いに赴く勇者のようだな
弱いくせに
少しお前を 刺すのが怖くなった
やさしいままの春は
はるかかなたに 悲しいほどの響きを残す
寂しさに打ちひしがれたお前には
もう届かない
でもお前は結局 忘れることができない
ゆっくりその口が動いた
また、私は お前を蹴散らすことに怯えた
さよならの時はくる いつか必ず
それなら 憎むよりかは
「愛しなさい」 誰かが言った
私の言葉ではない
ただそれを思い出した時に、三日月がでていた
おそるおそる ナイフをもつ手を緩め近づく
まっかな 嘘など 放り投げたその体に
初めて知った お前の
肌の温度に 触れてみた
私はお前と 歩いてみる
疎ましいと思っていたその身は あたたかかった
呪いのついた手足 枷となった言の葉
切り離せるほどの覚悟は微塵も存在しない
だから鎖を引きちぎるのはやめてやる
雑音に耳を傾ければ それらは祈りとなり
お前を導く可能性を秘めた
宝石のかけらとなりうるのだ
呼吸の理由が存在する限り
私が離せないものを抱え 空の下で今日も
いくたびも 足を前へだせ
動かずとも きっと進める
お前は気づいていないだろうが
地面を踏み締めるその力が
これからもいかすだろう
五体満足でない心も
いつしか捨てようとした過去も
お前のものだ
羨望を認め 息を吐け
焦りや虚しさは お前だけの命綱
掴んでやれ 離すんじゃねえぞ
その約束だけで 充分だ
お前の背をおしてやりたい、
そう思えたことが、今はただ嬉しい。