逃げの本能



1.発端

 あれは、今年の夏じゃった……今もクソ暑いから夏だって? たしかにね。

 7月中旬あたり? に、X(旧Twitter)で、とある小規模な出版社さんのツイートが、ちょっとバズってたんですわ。

 「1000文字小説の企画で原稿募集してますが、まだ二人しかきていません」

 って。

 あぁ、じゃあ1000文字くらいなら、気分転換でガッと書けるかもな、と思って書いたものを送った。(クオリティはお察し⭐︎)

 メールでpagesファイルを添付して送ったんだけど、迷惑メールフォルダに入ってたらしく、「受領しました」の返信いただくまで、ちょっと時間かかったりしていた。まぁ、そういうのは、よくある話よ。
 その後は、特に何もなく、「10/1にKindle版を刊行予定です」ってツイートが流れてきたのが9月の20日過ぎ。


2.何やかんやしてくる


 「今回募集した1000文字小説は、10/1に刊行予定です」
 のツイートが流れてくるのと同時に、その出版社さんは、

 「次回の1000文字企画は挿絵があるといいなと思いました。絵師さん、画材代は出すのでどうですか?(意訳)」

 とツイートなさった。
 正直、私みたいな「自分の名前が載った本がいつか欲しい……」みたいな字書きはまぁまぁいると思う。
 が、絵師さんはタダで寄稿するとは思えないぞ? と思った。

 とはいえ、その企画趣旨に賛同される絵師さんもいらした。
 が、そのあたりから話がごちゃごちゃしてくる。

 「同じく参加する絵師の中に、AIを使ったイラストを使う人がいるなら描かない」

 「小説の宣伝ツイートに、AIイラストを使っている作家がいる。そういう人がいるなら描けない」

 一つ一つの主張はわかる。

 わかる。

 わかるんだけどさ。

 web小説なんて、宣伝ツイートにAIで描いた自作キャラのイラスト添えてる人、山ほどいるよ。

 なんでって?

 ビジュアルがあると、人目を引く→PVに繋がる、の図式があるから。


 「字書きはイラストや表紙のフォントにもこだわるべきだし、できないなら絵師に依頼するのが筋!」

 って意見も見た。

 わかる。

 わかるよ。

 私に絵が描けるなら、全部自分でやりたいと思ってるよ。

 だから、描けない人は、絵師さんに依頼したり、AIイラストを作るわけで。

 しかも、何作もいろんなところに載せている人は、それぞれの作品に対して、お金払ってイラスト依頼しなきゃいけないとなると、PVが跳ねなかった時のロスがめちゃくちゃデカくない?

 だからごめん、字書きがAIイラストを作る気持ち、わからんでもないんだ。

 自分の作品は、作風的に、AIイラストつけたところでPV上がる気がしない(かわいい女の子も、かっけぇ男の子も出てこない)ので、AIイラストのお世話になったことはないけど。

 web小説界隈の、PVありきの世界ってところは、この出版社さんも理解してるよね……さすがに……?

 と思ったら。
 「我が社はクリエイターを応援します! みんなでいい本を作りましょう(意訳)」
 で濁されちゃったので、「ん?」となった。

 さらに言うと、企画に賛同している(?)絵師さんか、傍観者かはわからないのだけど、

 「字書きもchat GPTなどを使わないという要件を設けるべき」

 と言う人もいて。
 いや、わかるよ。

 めちゃくちゃわかる。

 わかるんだけど。

 1000文字を自力で書けないヤツは、字書きを名乗らない方がいいと思うZE⭐︎
 (※詩や短歌、俳句を作る方は、これに当てはまりません。あくまで、小説という括りでの話です。)

 とは思ったよね。
 あと、chat GPTに書かせてないかって証明って例えば……何やればいいのかな?

 絵師さんは制作過程の証拠映像とか画像を求められるわけだし、字書きもそれぐらいやらないとフェアじゃないよね???
 書いちゃ消し、書いちゃ消し、のつまらない画像が延々と続く映像を、出すの???(つか、私、人より書いちゃ消しが多いとは思う)

 というか、chat GPTに書かせた方が、私が1000文字書くより、いいものできそうって思っちゃって、ちょっとツラかった。笑

 話は逸れたけど、要するにこの出版社さんの次回の1000文字小説企画は、「過去一度もAIに世話になったことがない者だけ応募しなさい」的な話になってきていた。



3.生成AIじゃないAIはOKですか、NGですか?

 挿絵の件で、出版社さんのツイアカに集まってきた絵師さんたちは、「画像生成AI」について議論なさっている。(もちろん、chat GPTによる「文章の生成」について語っている方もいらっしゃるけども)

  実は、私が10/1に刊行される予定だった、挿絵の件とは関係ない「1000文字小説」に送った原稿には、

 ・ガ○トの配膳ロボットみたいなAI

 が出てくる。

 原稿の中にも「AI」とはっきり書いていた。

 登場人物からの質問に対し、そのAIが答えるシーンがあった。

 AIに対して否定的な論調でもなく、生活必需品として存在しているイメージで書いた。

 そしたら、この話の流れ。

 出版社さんはbioに「生成AI拒否」と入れたりしている。 

 あーっと、うん。


 この出版社さん周りの、今の空気で、生成AIじゃなくても、AIって存在が出てくる作品を出すのは、もしかすると、めちゃくちゃ危なくない?


 だって1000文字だもん、如何様にも解釈できる余白ありありなんだよなぁ。

  いや、さすがにそこまで曲解する人はおらんやろ?

 SiriとかAlexaとか、使うじゃん? 話しかけるじゃん?

 でもここで、AIを「当たり前のものとして使っている」シーンを書く=この字書きはAIを許容する派の人間だ! と評されてもおかしくない流れが、傍目にはできてたぜ?



 だって、文字でしか表現していない。


 生成AIの学習元データの許諾が不明瞭とか、そういう現実のバックグラウンドの話は、私が書いたものには反映していない。

 私が書いたのは、「生活必需品として」「少子化になった近未来、子供の情操教育も担うようになったAI」の存在だから。

 これは創作物全てに言えることだけど、作者の主義主張が、文に全部出てくるわけではない。

 今回、送った作品は、過疎・少子化して、ふるさとには誰もいないみたいな風景と、そこを訪れた子供に連れられたAIの話、だった。

 とはいえ、

 ・中身を見る前に、AIというワードがあることで、嫌悪感を持つ人がいないとは限らない。

 ・私がAIの存在を容認する人間だ、と判断されるかもしれない。(実際のところ、私は「生成AIって、使い道を誤らなければめちゃくちゃ有用!」だと思ってる。)

 ・私の作品を載せたことで、「この出版社は過去、AI容認派の作品を載せたぞ!」みたいな話になられても困る。

 ・シンプルに、このゴタゴタに巻き込まれたくない。

 結局、最後の、この感情が一番デカかった。↑



4.取り下げ


 ってことで、刊行直前、Kindle版から外してくださいってお願いしました。
 (大変迷惑なことをしたという自覚はあります。今後一切、こういうことはしないように、企画に参加する際は、内容や趣旨をしっかり確認し、二度とこんなご迷惑をかけないようにしよう、と誓いました。)

 で、何やかんやあったものの、ようやく挿絵募集前の、夏の1000文字企画本が刊行された…………らしいのだけど、どうやら不具合連発らしく。(落雷で停電した影響で、データが破損したようです。)

 刊行直後にそれが判明したので、データ送った他の参加者さんたち(おそらくKindle版を購入した方)が、ちょっとイラついてらっしゃる様子なのをお見受けした。

 次回は挿絵も扱う予定? ですよねぇ……。
 データの扱いはしっかりなさった方がいいですよ、とここでだけ、呟いておきます。







余談:

 AIって使いこなせればすごく有用だな、と思ったのは、私の知るとある字書きさんが、AIに自作を学習させて、プロットの整理や文章の不自然なところをピックアップさせた、というツイートをしたのを見た時。

 自作をある程度作り終えている状態で、その方は「文章の生成」ではなく「不整合な部分を炙り出す」ために使用されている。

 AIと文章の関わり方については、これが本来の使用用途だと思う。

 こんな使い方できるのか! すごい! って目から鱗だった。
 もし、このやり方が、AIイラストを忌避する絵師さんに「AIユーザーだからダメ」とみなされるなら、ちょっと相容れないな……と思った。

 私は、文章をコピペして推敲できるサイトさんで、頻出する言い回しを校正するんだけど、それはOKなのかな。

 こういうのも、ダメって言う人はダメだよね?

 「これならAI使ってもいいけど、これはダメ」ってラインが、現時点では個人の裁量でしかない。(同じ価値観の人たちで議論している感じ。)
 そのラインを決めていくために必要な対話が、できていないと思う。

 だからこそ、今回の議論について、「原稿を取りまとめる出版社」が先頭に立って線引きする必要があったんじゃないの? とは思う。

 それができてなかったし、出版社さんのツイアカが、不用意に第三者を巻き込んでるから(※これは、前回の記事で少し触れた)、なんか違うだろ? って違和感を超えた不快感が、すごかった。

 この件については、いろいろ反省しなきゃいけない点が多い出来事でした。

 まぁ、今はもう、気持ち切り替えて、頑張っていきます。



いいなと思ったら応援しよう!