紫陽花の咲く頃に
私の日々は貴方によって形成されていた。
朝一番にすることは洗顔から歯磨きに変わっていたし、1人でしていた読書は貴方と肩を並べてするものに変わっていた。
利き手で紙タバコを吸いながら、もう片方の腕で私を抱きしめてくれる朝がどうしようもなく好きだった。
ずっと誰かに愛されたいと泣いていた私が、初めてこの人を抱きしめてあげなきゃと思った。
誰にも甘えられない貴方が、何も気負わずに帰って来れる居場所になりたかった。
忙しい貴方に合わせて私の生活は変わっていった。待つ時間が増えて、既読のつかないメッセージを、過去にくれた言葉たちを何度も見るようになった。
写真の中で私に笑いかける貴方に何度も会いに行ったし、動画の中の優しい声を何度も繰り返し聞いた。
貴方の重りになりたくなくて、辛い夜を1人で沢山抱きしめた。
貴方は私の1番好きな景色を知っているだろうか。私の名前を呼ぶ貴方の声や、これ以上ないくらいの優しい顔を向けてくれていることが私を救っていることに気づいているだろうか。
なんでもないような毎日が堪らなく愛おしくて、そんな些細な毎日が幸せだった。
貴方の横で笑う私を愛してくれるあの時間に閉じ込められていたい。
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