8勝2敗の仕入論
商売において「仕入」と「販売」はどっちも同じくらい重要かと思います。「販売」する力がなければどんだけ良い「仕入」をしても宝の持ち腐れですし、良い「仕入」が出来なければ「販売」において脚色が強くなっていったり、付加価値(粗利率を極端に落とす)を付けずに販売せざるをえなくなります。
それはどんな業界でも同じかとは思うのですが、青果業界という特殊な業界においての仕入論を書かせてもらいます。
1.青果という巨大な市場の特徴
当社は、多様な仕入れチャネルから仕入を行います。
生産者さん、生産者さんらを束ねた組合や商社、(全国の)青果市場の卸売会社、(全国の)青果市場の仲卸、などなど。
そうすると嫌でも気づかされる事があります。この業界は、どこから仕入れるから一番いい仕入というのが【価格と価値】を天秤にかけ、お値打ちな仕入れを出来たか?という指標で考えると、ハッキリとどうとは言い切りずらいという事です。
「生産者さんと直接契約して中抜きすれば中間マージンがなくなって価格は安くなる」
そんな論を見受けたりしますが、直接値決め取引のすぐ隣側では毎日のように青果相場は動いており時に乱高下もします。そうすると何が起こるか?
「中間マージンが入っている方が直接取引よりはるかに安い」
こんな事も起こります。
同じ価値の商品が隣ではるか安く売っている場合、お客様が隣から買うというのは至極当然な流れだとは思います。良いか悪いかの話ではなく。
逆もしかりで、
「直接取引でしか仕入れられない超こだわり商品を(高価格帯の)適正価格で直接契約した」
当たり前に相場より高いつもりで値付けしたのに、相場が暴れてさらに高い相場を付ければ直接取引の方がこだわり品にも関わらず安くなったりします。これはいい悪いという話ではなく現実的にそうです。
きっと、規格外のみを狙ってる事業者さんも同じように相場には苦労をするはずです。なぜなら、このマーケットが超巨大かつ、生産量、需要量が毎年大きく動く事が要因です。
農水省の資料を見ると、野菜・果物の農業算出額が3兆円以上もあり、中間流通も含めるとそれ以上の額で動いていると思いますし、全国各地で生産量が異なり(天候にも左右され)、全国各地で需要量も異なり、物流網も異なる、となると相場の完全なコントロールはほぼ不可能だと言えます。
▼農水省基本データ集
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/attach/pdf/index-15.pdf
そんな中で仕入をした商品(仕入価格)に十分な付加価値(粗利)を付けてもお値打ちだと感じてもらって販売するという事が、何か1つのやり方が圧倒的な正解となるのは難しいというのが分かってもらえるかと思います。
2.8勝2敗を目指すスタンスとは
商売の原理原則は「安く買って高く売る」だと思います。
これはきれいごと抜きでそうです。
ただ、こと青果業界ではどうでしょうか。
もちろん、基本的には納得のいく仕入をする必要が絶対的にあります。
そのため、弊社では想定している粗利率に着地するよう、仕入自体の工夫や、仕入ポートフォリオを組んで「販売」する際に必ずお値打ち感を感じられるようにしています。
しかしながら、常に全勝をし続けるという事は取引先と都合のいい時だけ付き合うという事に他なりません。これでは、数年はもつかもしれませんが、恐らく数年で活動が出来なくなると思います。
商売として、定量的には、ある価値のものをこの価格で仕入れられたというデータを残し続けそれがどれだけ良い仕入(付加価値を付けられる仕入)だったのかを振り返らないといけませんが、定性的には、取引を続けたい仕入先と商いを続けていけるようなバランスが取れているのかという側面から仕入を振り返らなければなりません。
その時に、定量的には「負け」(=もっと安い価格で同じレベルのものを仕入れられたetc)ている事が実は重要だったりします。
3.2敗出来るように8勝するというスタンス
相場に踊らされ、「安い時は市場から」「高い時は直接取引」これを繰り返していると、最終的には双方から信頼を失います。しかしながら、相場は存在するので、この相場と共存しながら仕入をし粗利を生みだし続けなければなりません。
そこで意識するようになったのが、
8勝2敗というスタンスです。
勝ちの定義はいろいろですが、私としては、「販売」で目標の粗利率と額を大きく上回れそうな仕入です。そうしてしっかりと稼ぐ粗利は、
・相場が安くなりまくったが、契約仕入の仕入先を裏切らないため
※当たり前の事書いてますが余裕で破られてます
・量が多すぎてどうしようも無くなってる仕入先から、明らかに過剰量と分かっていても仕入れる
・故意ではなくやむおえない理由で弊社側が損失を被る場合にそのまま受け入れる(誤納品、発見しずらかった傷み、など)
・単純にスキル不足でうまく仕入が出来なかった
などの機会を受け止める体力として蓄えておくようにしています。
※上記は基本系を書いていますが、実際は契約の仕方で双方がフェアかつリスクが低くなるような工夫をしています
端的に言うと、同じ相手からずっと得したと思うような仕入をしていないかはすごく注意して考えています。売る側(私から見た仕入先)は基本的には損し続ける売り方はしないものですが、仕入側として勝ち過ぎな仕入をしてないかを考えるのはこの業界で良い仕入を半永続的に続けるためにすごく有効な戦略だと思います。
これからまだまだ形が変わっていくとは思いますが、今の最新の自分の仕入理論でした。