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ザッカーバーグの"Done is better than perfect"の理解と実践

Facebook創始者であるザッカーバーグの名言として広く知られている言葉に、"Done is better than perfect(完璧よりも実行することが重要である)"がある。

今回、"Done is better than perfect"の意図することを勝手に解釈し、それを実践することによるメリットはなにか、また、自身の置く環境と照らし合わせ、既に実践しているもののアップデートや変化のきっかけとしたい。

"Done is better than perfect"の解釈

この一文だけでも結構共感できるなと思ったのですが、どういった経緯でこの発言をされたのか、この思考がどのように活かされたのか、ふと気になったので調べてみることに。

スクリーンショット 2021-08-08 183729

なんか「言ってない」とか「たぶん」がサジェストされているので実は言ってないの?とか、、、

さすがにそんなことはなかったです。どうやらFacebook上場時のIPO申請資料に記載されている”The Hacker Way”という行動原理のよう。

The Hacker Way is an approach to building that involves continuous improvement and iteration. Hackers believe that something can always be better, and that nothing is ever complete. They just have to go fix it ? often in the face of people who say it’s impossible or are content with the status quo.
"The Hacker Way"というのは継続的な改良と反復による構築のアプローチだ。技術者は、何事も常に改良することができ、それに終わりがないということを信じている。彼らは問題を直す、たとえ、人々がそれを不可能だと言ったり、現状に満足していてもだ。

Hackers try to build the best services over the long term by quickly releasing and learning from smaller iterations rather than trying to get everything right all at once. To support this, we have built a testing framework that at any given time can try out thousands of versions of Facebook. We have the words “Done is better than perfect” painted on our walls to remind ourselves to always keep shipping.
技術者は、すべてを一度に正しく実行しようとするのではなく、小さな反復からすばやくリリースして学習することにより、長期的に最高のサービスを構築しようとする。これをサポートするために、Facebookの何千ものバージョンをいつでも試すことができるテストフレームワークを構築した。我々は、常に"完了することは完璧よりも優れている"ことを思い出すために、壁にその言葉を刻んだ。

Mark Zuckerberg’s letter to investors before Facebook’s initial public offering (IPO) in 2012.

やはり、色々情報に触れると解釈が変わるなと。「言ってない」というサジェストワードが出てくる部分に少し共感した。たしかに言ってないかも。

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“Done is better than perfect”という表現があまりにわかりやすく、スローガンとしても使われているので、いろんな解釈でこの言葉が独り歩きしてしまっているなと。

自分は"Hackers try to build the best services over the long term by quickly releasing and learning from smaller iterations rather than trying to get everything right all at once. (技術者は、すべてを一度に正しく実行しようとするのではなく、小さな反復からすばやくリリースして学習することにより、長期的に最高のサービスを構築しようとする。)"こそが、本質的な行動原理としての価値であり、その実践として“Done is better than perfect”がスローガンとして置かれているのだなと理解した。

つまり、完璧じゃなくていいからとりあえずやってみて、それを改善し続けることで最高のものにしよう、ということ。


"Done is better than perfect"の恩恵

上記の解釈より、ここからは、"Done is better than perfect:(最初から完璧を目指すのではなく、)まずは実行し、経験学習による改善を続けることで、理想を目指すことが重要だ"と定義する。

では、それによってどのような恩恵が受けられるのか。2つ上げてみる。

1. 創出物や考えに自信を持って世に発信しやすくなる

浅草氏_努力と諦めの結晶

これは僕の好きな漫画のひとつである「映像研には手を出すな!」でのワンシーン。アニメ制作締め切り前夜の徹夜中、進捗を聞かれた浅草氏の一言。

創出物に完璧などなく、魂を込めた妥協と諦めの結石を磨き続けることこそが重要なのだと。

完璧でないものを世に出すことに抵抗を感じる人がおそらく多数派だろう。自分もそうだ。だが、だれも終末を知り得ない、終わりのないこの世に、現時点で完璧と言えるものは存在しないと言って良い。そんな割り切りと言うか、認知によって、まず実行してみるというハードルをいくらか下げる一つのきっかけになるのではないだろうか。

MTGで思い切って発言してみるとか、周囲がやっていないことを逆張りでとりあえずやってみるとか、結果に対する不確実性の高い施策を最小限のリスクだけ確認して実行してみるとか。ほんの些細なことでも、実践するだけで頭一つ抜け出ると思う。

実際に、世間で成功していると認識されている人たちも、特別頭がいいとか、才能に満ち溢れているといった人は極稀で、この力が抜きん出ているのだと思う。Perfect Humanはいないので

画像5(別格の方々だが、みんな実行→失敗を繰り返して今があるはず)

悪意がなく、法に触れるようなことでなければ失敗を恐れずどんどんチャレンジするべきだと思う。失敗したり、誰かに迷惑をかけたときは謝って今後に生きる反省をすれば良い。自分が思うほど、他人は自分の失敗を気にしてはいないし、すぐに忘れられるもの。むしろそれが出来ない環境ならもったいない。

未完全な状態でスタートすることが心理的に難しいという気持ちにはすごく共感できる。そんなときは、可能な限り客観的視点を持って、内的要因(心理的ハードルなど)と外的要因(組織の心理的安全性など)を整理してみるのがおすすめ。(最後の章参考になるはずなのでぜひ最後まで読んでください)

2. 潜在的価値との出会い

ジョブズはiPhoneを世に出すためにiPodを作ったかと言われればNoだろう。そして、今あるiPhoneもapple社が描く理想状態ではなく、あらゆる変化や顧客の反応を取り入れた経験学習により進化を続けている。

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飲食店で、常連客の何気ない一言から創作したメニューが、愛され続ける看板メニューとなった、なんてエピソードを一度くらいは聞いたことがあるだろう。

一度世に出すことで、社会からのフィードバック(反応や適応)を受け入れることができる。これなしでは建設的な経験学習は進まない。


勉強することや議論することももちろん重要だが、実行しないと見えない、気づかないものが多すぎるのだ。世のイノベーションはすべて実行から起きていると言えるだろう。もはや、”Done is better than Studying, discussing, ... , and perfect.”である。

“Done is better than perfect”の実践

僕の所属する会社(2021/12/29時点)では、"Take Action First"という、“Done is better than perfect”と似た意味を持つバリュー(価値観)を掲げている。

Take Action First ~まずやってみよう~
誰も成し遂げたことのない未知で不確かなものに取り組んでいるからこそ、悩む前にまず行動する。動くことで見えた結果を振り返り、次の道筋を導き出していく。

参考記事:https://kawaraban.archibase.co.jp/640/

ぜひ上記の参考記事を御覧いただきたいのだが、これを実践する上で、個人的な意識だけでなく、組織として意識していることについて少し紹介したい。

失敗を許容するカルチャー

最近は組織において心理的安全性※1というテーマがよく話題に上がるが、弊社では成人発達理論※2や臨床心理学※3などの概念も交えながらそれを結構意識している。

いくら“Done is better than perfect”を意識的に掲げたとしても、先述の通り、心理的ハードルを感じる人のほうが多数派。

であれば、それを実践しやすい環境を用意する他ない。その選択肢として、失敗を許容するカルチャーの醸成に取り組んでいる。

16Personalitiesエニアグラムなどの自己診断ツールを用いた自信の強み/弱みの共有
・生い立ちの振り返りと幼少期に形成される早期不適応スキーマ※4の共有と理解
・挑戦することを常に評価し、より良くするためのフィードバックができるカルチャー
・etc...

『成人発達理論による能力の成長』にも記載があるが、個人にどれだけの意識があろうと、それに最適な環境が整っていない限りは最高のパフォーマンスを出すことは難しい。

どのように実践するか、それができる環境にあるか、また他者にそのサポートができる体制であるかは、まだ見ぬ可能性を拓いていくために、常に意識し続けたいものだ。


※1 心理的安全性:米Google社が自社の生産性向上のために調査する過程で再発見した言葉であり、誰に何を言っても、どのような指摘をしても、拒絶されることがなく、罰せられる心配もない状態のことを指す。
https://jinjibu.jp/keyword/detl/855/#:~:text=%E3%80%8C%E5%BF%83%E7%90%86%E7%9A%84%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E8%81%B7%E5%A0%B4%E3%81%A7%E8%AA%B0,%E3%81%A8%E3%81%AF%E5%B0%91%E3%81%97%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

※2 成人発達理論:「発達心理学」の一分野であり、人間の成人以降の成長・発達に焦点をあてた心理学の理論。
https://www.earthship-c.com/leadership/adult-development-theory/

※3 臨床心理学:、精神障害や心身症、心理的な問題や不適応行動などの援助、回復、予防、その研究を目的とする心理学の一分野。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%A8%E5%BA%8A%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6

※4 早期不適応スキーマ:供時代に確立された、人生の全体に繰り返される、自己敗北的な感情的・認知的パターン。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E7%99%82%E6%B3%95#%E6%97%A9%E6%9C%9F%E4%B8%8D%E9%81%A9%E5%BF%9C%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%9E

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