【本/読書】二十世紀電氣目録/結城 弘
積読記事
ようやく読了
やれやれ、複数冊同時に読んでいるせいか集中力が不足しているせいか、読み終わるまでに年単位でかかってしまっている(笑)
とはいっても、作品はすごく面白い。
あとがきで作者自身が書かれているように、ホントにいろんな要素が詰め込まれていて、体験や知識から膨らんで行く創造の世界、思考を深くすることに拠って起きる発想の転換と痛快さ等、素晴らしい作品だった。
リアリティの中に煌めくファンタジー
この作品は登場人物ひとりひとりを丁寧に描いていく事で、全体を通して強いリアリティを感じさせるし、その生々しい人間絡み合いが、後半に向かって謎解きの様に解けていく。
特に終盤の展開では、そこまでずっと表現してきた現実感、登場人物の抱えて来た葛藤の本性が痛快爽快に明らかになっていく。
そして、そこに極めて純粋で可愛らしいラブストーリーや、天国地獄極楽の解釈を含む宗教観や信仰、そしてこの話の舞台となる明治から大正時代の日本人にとってまさに夢のような「20世紀という電気の時代」の到来までを織り込んで、見事にリアリティがファンタジーに昇華されていく。
前半はどちらかと言えば地味な印象を受けるストーリーの流れが、作者の丁寧な文章表現ですらすらと進んでいくし、後半はまさにこの作家の表現力によって登場人物に共感し、クライマックスでは涙が流れた。
本のあらすじを書くのは野暮なのでやめておく。
アニメ化の話
発売時にアニメ化決定していて、その後話がどうなったのか。
こういう群像劇は京アニの得意分野だし、ぜひ実現してもらいたいと思っている。