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【エッセイ】極貧試考#4 【SS】

【御注意】
 筆者は創作活動においてプロットを建てたり下書きをしたりという事をしない謂わば「即興的創作」を軸にしており、文体人称主義主張等、その時の気分や知見によってコロコロ変わります。
 と、このように書き出しだからと丁寧な書き方をしておりますがまた翌日に書き始めるともうまったく気分が変わってそれは、それは雑でテキトーな文体になったりもするし、そうでもない場合もあったりなかったりなので、基本的に最大の主題となる部分に関してはそれに沿った創作を心がけてはいますが、それでもおそらくは脱線に次ぐ脱線を繰り返し時には何を書いているのかわからなくなってしまってオチもないまま投稿することも有ると思われます。
 案外まともに書けるかもしないけれど、それは自分的に納得の行く形でこの創作物が完成した時までわかりませんしまた、記事内に登場する情報等についても自分が軽薄に見聞きしたことや行動したことを元に書き散らすだけであり、殆どの場合には情報源の裏を取るというような面倒臭く辛気臭く(筆者自身が)面白くない作業に関してはやりませんので、データに信憑性はありません。私は無責任です。
 ただし、記載するエクササイズ等に関してはとりあえず筆者自身が実践していることであるので少なくとも「俺的には」あり、とか、なしとかいう意味で真実です。
 私、万人に当てはまるようなメソッドなんてものを吹聴する手合は信用しないタイプの人間ですのであくまで個人主義、個人が良ければそれで良いという我儘感覚で長大なる連載エッセイを書いてみたいと思っております。まぁ気が向いた時にね。忘れちゃうかもしれないし飽きるかもしれないし。
 途中で投げ出すかもしれないし。

 ただひとつだけ断言しておきましょう。

”私は「極貧」を推奨しない”

前回

【ショートショート】米粒ループ

 極貧生活とは。
 ある日そう考えた。
 そして自宅にある食料を減らさない努力を始めた。

 3度のメシを2度に。
 案外苦しくもない。

 2度を1度に。
 まだいける。

 3日に1度になった頃。

 私の心にギスギスが生まれて。

 私は飢えた。

 私はいつもとぼとぼと足元を見て過ごすようになった。
 リアルに苦しいシューゲイザーである。

 足元だけを見ていてそこに米粒を見つければ拾って喰う。
 極貧を試行する事によって飢えたからだ。
 点々と落ちている米粒を拾ううちにやがてなぜか米粒が1円玉になるのだが、脳が回っていないのでそれを拾得物として警察に届けるということを思いつかない。ひたすらに1円玉を拾って進む。やがてそれは5円になり10円になり100円になるのだが、脳が回っていないのでその状況が不可解不自然で有ることに気が付かない。
 やがてそれは1万円札になり、いつもどおりそれを拾い上げようと満面の笑みで手を伸ばすと激痛が走る。テカテカに磨き上げた牛革靴の底が伸ばした手の甲を踏み、ぐりぐりと潰すからだ。
 激痛に耐えながら靴底から、脚を覆うシワのないズボン、金ピカのベルト、真っ白なワイシャツに薄紫のネクタイと仕立ての良いスーツにまで目線を上げて行くと、見上げた先にはニッコリと笑う紳士の顔があって「拾ったお金は私のものなので返してくださいよ」という。拾ったお金は全部、米を買い、炊き、塩を振って喰ってしまい、すでに一部は糞になって道端にポツポツと排泄してしまった。仕方なく糞を拾い集めて紳士に差し出すと顎を革靴の先端で蹴り上げられ、顎が砕けるのだが、脳が回っていないので「顎が砕けてしまってはメシを喰うことができない、どうしよう」という的が外れた心配をしながら、更に分の悪い労働にあくせくしして身体的精神的心理的さらに時間的な豊かさもどんどんと奪われていく。

 そこにまた米粒が落ちている。脳が回らないのでそれを口に入れ、顎が砕けて咀嚼が難しいので丸呑みにする。
 やがて消化系を発端として健康状態が悪化するのだが、返済が遅れれば例の紳士に次は鼻を潰される可能性があるのでそのまま労働を続ける。米粒はやがて1円となり5円となり10円となり100円となり1000円となりついに10000円となって拾い上げようとする私の前に以前とは別の紳士が笑い、靴底で踏まれ鼻が潰れた、結局。

 鼻は潰れた。

 極貧生活とは。
 なぜあの日そう考えたのだろういや、考えたまでは良かった。
 なぜそれを始めてしまったのだろうか。
 食費が浮けば裕福になると思っていたしかし、その効果は極めて限定的であり、飢えによる悪影響はそんなちっぽけな効果を遥かに凌駕して私の人生を蝕んでしまった。

 元々0だった預貯金はマイナスに転じた。
 飢えて米粒を拾ったばっかりに。

 あ、また米粒が落ちてる。ラッキィ。

(了)

(to be continued...)

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