【映画】箱男
箱男が映画化されたらしい
映画「箱男」予告編
2024は安部公房生誕100周年イヤー
安部公房なー、思えば長らく、ものすごく長らくなんか本能的に遠ざけていたような気もする。
正直、なんだかわからなすぎて、最初に読んだ印象から混乱してしまったのだと思う。
あれはおそらく小学生だったんじゃないかと思うのだが(笑)、当時私はとにかくひたすら本を読んでいて、一応学校には行くんだけどぶっちゃけ全く興味がなく、一刻も早く家に帰りほんのわずかでも長く家にいて本を読んでいたかった。
その時期にはもうご飯中にも本を読むようになってしまっていて、読書については極めて寛容だったうちの親も流石に食事のときはやめろと警告してくるレベルで読むことだけをしていた。
小学生がなぜ安部公房なのかというと、単純に父親が本を持っていたから。
前述の通り読書には寛容な親だったが、金銭的には寛容でなかったため、ある程度までは割いてくれた本の予算も度を超すとなかなか決済が難しくなり、周囲に読むものがないので仕方なく教科書を読んだり図鑑を読んだりしていた私はある日ついに、父親の本棚に手を出し、そこにある本を手当たり次第に読み始めた。
もう文字であればなんでもよかったのだけど、わりと印象に残っているのは吉川英治全集。その時もうすでに古くて背表紙がボロボロになっていた「宮本武蔵」なんかは夢中になって読んだ。
なんかわりとそのあたりと同列で安部公房を発見して読んだのだけど、正直その作品がなんだったのかもよく思い出せないし、読みながら私は普段、文字を脳内で映像化していることが多いのであるがその時は、なんて言ったら良いのか、その映像がすごく静止画的でほんとにイメージだけみたいな感じになって、なんかストーリーがうまく追えない、よくわからないみたいな、けっこう不気味で斬新な印象を受けた気がする。
そりゃろうだろう、小学生だし。
でもそういうわけのわからなさの中に、サクサク読める心地よさがあった。言葉のつなぎ方、間のとり方、作品全体を通底する一定のリズム、今考えれば安部公房の文章というのはそういう読み易い文章で、そういう意味で読書好きには心地良い文章を書く作家なのだと思う。
小学生の時に読んだ作品はもしかしたら「箱男」だったのかもしれない。
映画「箱男」の公式ページのトップに、段ボールを被った人間すなわち箱男の写真があるのだが、なんとなくそれが懐かしく感じられるのだ。
映画化
監督は石井岳龍、主演は永瀬正敏、共演は浅野忠信、佐藤浩市、他。
いやしかし、石井岳龍+永瀬正敏+浅野忠信ってラインが鉄壁というか、この作品はかなりメジャーだけどこの三人は同じバンドでハチャメチャな音楽をやっていたり、もっとずっとアンダーグラウンドな映画を一緒に作ったりもしているという気心しれた仲間なのだろうと思う。
メジャーなところだと、ちょっと古いけどこれ。
このころはまだ監督が石井聰亙という名前で活動していた。
映画「五条霊戦記」
次はどマイナー代表(笑)このときもまだ石井聰亙名義。
この予告のバックに流れてる音楽は、石井+浅野+永瀬がやってたバンドの演奏。
余談だが、この映画はスタッフのひとりとして地元の知り合いが参加している。エンドロールで0.5秒ほど名前が出て本人喜んでいた(笑)
映画「エレクトリック・ドラゴン・80000V 」
エンドロール
ともあれ
こういう非常に映像化しにくい作品を映像化するにはピッタリのチームが制作したこの映画。
どうも、相当昔に映画化の話はあって、しかしなんらかの事情で直前で頓挫していたのだが、生誕100年の機運に乗じてついに撮り直し完成させることができたのだそうである。
公開日がまだ1ヶ月くらい先のようだけど、私は絶対に劇場へ行きたいと思っている。
あと、安部公房の作品てもともと、たいして読んじゃいないのだが、電子書籍で入手しやすいものを数冊読んでみた感じ、今読むとあの小学生の頃のわけのわからなさ、そのわからなさをわからないまましかし、克明に記述することで見事に生々しく報道写真のように空想させながら決して文章を破綻させることのない技術に、この人すげぇわと思わざるを得ない。
映画「箱男」公式