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儲からない焙煎からの脱却 ロースタリー向け、お客様を増やす方法5選(前半)

お客様を増やすことは、ほとんど全ての事業者に共通する課題だ。特に、焙煎・小売を行う自家焙煎のお店の場合、客数が増えて売上が伸びれば利益は自然についてくる。
それでは、どうすればお客様を集められるのだろうか。ここでは5つの方法を紹介したい。コーヒー豆を買うことは、スーパーでの毎日の買い物とも、着飾って訪問する高級百貨店でのショッピングとも異なる。コーヒー豆の特性をふまえて、選ばれるお店づくりを進めたい。


新規と既存で分けて考えることがお客様を増やすコツ

自家焙煎のお店(カッコよく言えばロースタリー)は、原価率が比較的低くて、粗利率はわりと高いです。すなわち、売上を伸ばせば利益も勝手についてくるということ。他の業種・業態と比べても、その傾向は明らかです。

ただし、これが経営の面白いところなのですが、「利益率が高いからロースタリー経営は簡単」というわけでは全くなくて、むしろ転落と隣り合わせの崖っぷちという側面もあります。客数が伸び悩んだときのダメージがすごく大きくて一気に赤転するリスクも背負っているからです。

客数を考えるときのポイントは、新規顧客と既存顧客に分けて考えることです。新しいお客様を10名呼び込むことと、一度ご来店くださったお客様がその後10回ご来店くださることは、売上に対しては同じ効果があります。しかし新規顧客を増やす施策と既存顧客向けの施策は全然違うので、ここを分けて考えることがすごく大事になってきます。

新しいお客様を呼び込むのは「労多くして功少なし」

客数は新規顧客と既存顧客に分解して考えられるという話をしました。その上で必ずご理解いただきたいのは、新規顧客を増やす優先度は低いということです。

新しいお客様を増やすには、チラシを刷ったり広告を出したりと、相応のお金がかかります。新規顧客を開拓する費用は既存顧客の再来店を促す5倍だと言われています。しかも新規顧客向けの施策は持続性が低いです。一時的に増えたお客様がその後に減ったとしたら、「あのお店も落ちぶれたな」という評判が広がりかねません。新規向け施策というものは、効果も出づらいし、一時的にうまくいったらむしろ逆効果という恐ろしい施策なんです。

たとえばスターバックスが広告宣伝に費用を掛けないのは有名な話です。目の前のお客様を大切にすることは何よりの宣伝効果。美味しいコーヒーと優れたサービスがあればお客様は自然に増えていきますし、不自然に増やしたお客様はいずれ離れていきます。

自家焙煎のお店が取るべき基本施策は、再来店を促すこと。新規顧客を開拓するのは「労多くして功少なし」です。派手な施策で呼び込むのではなく、一度でもご来店くださったお客様に向けて全力でサービスを行うべきです。

あと、これは蛇足ですし個人的な想いになってしまうのですが、この記事を読まれている方は、既存のお客様を大切にできるお店でありつづけてほしいと思います。私自身も国立市というところにあるお店の大ファンでして、店主が体調不良の時にはお店を手伝ったこともあるくらいです。皆様にはぜひ、コーヒーの味のブラッシュアップに全力を注いだり、お客様に喜んでもらえる雰囲気づくりに注力したりしていただきたいです。コンサルタントとして喜んでお力添えいたします。


お客様を増やす5つの方法

それでは、どうすれば客数を増やせるのか。具体的な方法を5つ紹介します。記事が長くなってしまうので、残りの3つは後半に回しますね。いずれも今日から取り組んでいただける方法なので、参考にしてみてください。

打ち手1 インターネット活用を習慣化する

インターネットは新規のお客様向けと考える方もいますよね。それは違います。新規のお客様を狙うなら派手にして目を惹く必要もありますが、あくまでも一度でもご来店くださった方に向けた案内だと考えてください。「なんとなく惹かれて買ってみたコーヒー豆屋さんのことを、もうちょっとだけ知りたいな」「美味しかったからまた飲みたいな。定休日とか営業時間とか知りたい」という需要に応えましょう。

たとえば、Webサイトの更新が挙げられます。繰り返しになりますが、新規のお客様ではなく既存のお客様に向けて(ここが重要)、コンテンツを作ってみてください。たとえば、新しいコーヒー豆の情報や、営業日・営業時間などを載せてください。一度でもお店に興味を持った人がターゲットなので、こだわりすぎる必要はないです。

こだわる点をあえて挙げるなら、更新頻度です。1ヶ月に1回の更新を心がけてください。手元のデータによれば、3ヶ月を過ぎると再来店の可能性はガクッと下がります。週に4杯くらい飲むなら200gを飲み切るのに1ヶ月くらいであることもふまえると、やはり1ヶ月に1回は更新しておきたいですね。

Webサイトの更新と言っても、慣れてくれば1時間で更新できます。繰り返しますが、内容を作り込まなくて構いません。それよりも更新を習慣化する方がよほど大事です。1ヶ月に1回だけお店の空き時間にサクッと更新するだけでお客様の再訪率をグッと上げられるなら、結構お得だと思いませんか?

Webサイトの更新といっても、いわゆるSEO対策やSNSマーケなどは不要です。執筆をプロに頼む必要もありません。ホームページを無料で作れるサービスはいくらでもありますし、この記事のようにnoteに投稿するのもOKです。instagramに写真と文字を簡単に載せるだけでも十分に効果があります。

打ち手2 お得な情報をハガキで送る

季節ごとのハガキを送ることも効果的です。「11月に南米セールを行います。このハガキをご持参いただければ、南米ブレンド200gを800円でご提供いたします」といった具合です。これによって、既存顧客が再来店するきっかけを作りましょう。

しかも、在庫調整の効果もあります。「在庫一掃のため、特別価格で販売します」のように明記してもよいです。値付けについては原価率を計算しながら考えないといけないので、その辺りはぜひご相談ください。

お得なハガキを送る注意点としては、個人情報保護があります。法律を守りましょうというごく当たり前のことに加えて、ハガキを断りもなく送りつけたら先方の満足度は下がる一方です。「お得な情報を送ってもいいですよ」という意思表示をもらいましょう。ちなみに、メールやLINEでも構わないのですが、多くのメールを一斉送信するとGoogleなどにスパム認定されてしまうことがあります。まずは、ハガキの方が無難かと思います。

打ち手3以降 パッケージ・売り方・何よりも基本

次回記事では、お客様を増やす施策5個のうち、残り3つをご紹介します。
・パッケージにこだわること
・卸売を狙うこと
・基本的な施策を行うこと

の3つです。特にパッケージは、業者の言いなりで作ってしまっている方も多いです。形あるモノを売るからこそ、その特徴を存分に活かしたいところですね。

明日からはSCAJですね。みなさん、現地でお会いしましょう!

経営に困ったときの相談先リスト

・よろず支援拠点(国が設置した無料の経営相談所) https://yorozu.smrj.go.jp
・事業所がある地域の商工会・商工会議所(たとえば東京23区の場合は東京商工会議所 https://www.tokyo-cci.or.jp)
・中小機構の経営相談 https://www.smrj.go.jp/sme/consulting/tel/index.html

さきゆうコンサルティング室では、コーヒーのお店の経営相談を承っています。
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