【心理アセスメント】調査法、観察法、検査法、面接法のそれぞれの研究法の概念と、他の研究方法と比較した際の長所と短所について

✏︎調査法に関して

概要

質問紙調査法:人間の意識や行動に関するデータを、回答者の自己報告によって組織的に収集する方法
ポイント
・①データ②組織的③自己報告の3つのポイントが重要
 ①データ:人の意見や行動を表す手がかり、意見分布に関して収集されたデータがイメージに近い
 ②組織的:質問紙調査の対象になる団体が、調査対象として適切かどうか、また調査は標準化(すべての対象者が同じ条件で回答できるように質問の形式や順序を統一すること)がなされているか
 ③自己報告:内面を表現する場合は言語依存することが多いが、嘘なく性格に表現されているかの自己報告の信頼性を確かめる必要がある

留意点

✅目的をもって調査を実施すること
✅質問の量を予備調査をもって適切な量にしておくこと
✅謙虚な姿勢で調査への回答を依頼すること
✅調査を活かす力と方法を身につけること

長所

実験法との対比:現実の意見分布を知ることができる(倫理的な問題を生じることなく、意見と意見分布認知の関係を調べることが可能)
観察法との対比:現象が起きるまで待つ必要が無い
面接法との対比:多数の回答者から相互に比較可能な情報を得られる点

短所

実験法との対比:相関関係は明らかになるが、因果関係の特定ができない
観察法との対比:言語報告に依存するため、異文化圏や幼児への調査ができない
面接法との対比:少数の人から詳しい情報を臨機応援に得ることができない

方法

✅リサーチ・クエスチョンと仮説(知りたいこと)
リサーチ・クエスチョン:研究の出発点に値する問いのこと
            測定が可能な程度の具体性が求められる
仮説:リサーチ・クエスチョンの結果を予測した上での説得力のある説明
✅分析計画を立てる
リサーチ・クエスチョンに従って分析計画を立案する。その際、第3変数による影響を確認するために複数の仮説を検討する必要がある
✅調査計画の立案
質問文の表現方法:平易で短い表現がベター
回答形式の選択:単一回答法(当てはまるものを選択肢の中から1つ選択)
        複数回答法(当てはまる回答を複数選択してもらう)
        自由回答法(自由記述)
        評定法(尺度を選択してもらう 例:5段階評価)
        強制選択法(対立する2つの回答の1つを選択してもらう)
留意点:作成後すぐに実査を行うのではなく、予備調査を通じた修正が必須となる ※予備調査は本調査の対象と類似した対象に対して実施すべき
✅調査者の決定
母集団を明確にする ※母集団:調査対象者が所属する集団のこと
全数調査or標本調査かを選択する
標本調査の場合は標本抽出(サンプリング)を行う
 標本抽出の方法
 ー単純無作為抽出法:母集団全体から必要な数の対象を無作為に選び出す
 ー系統抽出法:同人数に分けた母集団から、事前に振り分けた該当する
  番号の対象だけを選定する
 ー多段抽出法:母集団を複数階層に分け、抽出単位から抽出を繰り返す
  ※都道府県→基礎自治体→地区→番地→個人
 ー層化抽出法:産業、性別、年齢等に母集団を分割しグループを作成、
  グループの大きさに比例する形で標本を無作為抽出する
✅調査方法の選択
 ー面接調査:膨大な費用が掛かるが、回答率が高く、代理回答の問題を回
  避することができる、質問者の形式に回答が影響されるため事前教示が
  必要
 ー留置調査:質問書を手渡しし、後日回収する方法。解答率は高くなる
  が、代理回答の問題は回避できない、費用も掛かる
 ー電話調査:比較的安価に実施でき、代理回答の問題の回避が可能、回答
  率の高さも担保、質問の深掘りが難しい、実施対象が限られてしまう
 ー郵送調査:安価に実施が可能、代理回答の問題あり、回答率が下がる
 ーWEB調査:安価に実施が可能、代理回答の問題あり、回答率が下がる、
  不正回答も増える
 ー集団調査:一箇所に集まることができる対象のみに限られるため、標本
  が偏る。そのため予備調査のみの実施が可能

✏︎観察法に関して

概要

自然に生起する現象をまるごと扱うことができるのが観察法
特に参加観察は仮説生成型の研究向き、「Xであること」でなく「なぜXなのか?」に焦点を当てて研究することが今後重要

自然観察法:日常の実態をありのままに切り抜くことができる方法
      対象者の特性を性格に把握することが可能
実験観察法:特定の行動を観察するために、膨大な時間を要する可能性も
      ある。回避するため実験者が状況を構成・統制することで、人
      為的に特定の行動を観察すること
      ※エインズワースのストレンジ・シチュエーション法
      ※生態学的妥当性の問題に注意を払う必要がある
       実験観察法により特定の行動がつくりあげられていないかど
       うかを、日常の現場に戻して確認することも必要
信頼性:どれだけの数を観察するかどうか
    どれだけ偏りなく対象を選択できるかどうか
    観察する時間と頻度

現象選択の方法

場面見本法:場面単位で現象を切り取りを行う
      ※子供同士の言語、非言語コミュニケーションの特徴
       (保育園で園児同士が関わる場面)
事象見本法:特定の出来事が生じるエピソードそのものに注目
      ※子供が泣く子供に対して取る行動
時間見本法:特定の行動が決めた時間の中で何回観察されるか
      ※授業に集中しているかどうか、特定の行動を時間単位で観察

現象記述の方法

行動描写法:生起した行動を、リアルに詳細に描写する方法
      観察対象の実態を記述できる一方で、不要なデータも収集され
      るため、整理・分析が難しくなる
カテゴリー・チェック方:時間見本法とセットで扱われる場合が多い
            予め観察する項目が準備されており、時間単位で
            該当する行動の出現数をチェックする
評定尺度法:具体的な行動を観察するのではなく、全体的な行動の特性を評
      定尺度に沿って評価する方法、主観的になりやすいのがネック

長所

・自然に生起する現象を、まるごと扱うことができる
・仮説生成型の研究を行うことができる
・言語的表現法に依存せず情報を収集することができる

短所

・調査対象を少数しか設けることができない
・時間と費用がかかる
・観察者バイアスが生じやすい

留意点

✅観察者バイアスが生じていないかどうか
✅信頼性のチェック
 同一データに対する2人の観察者の分類や評定の一致率を確認する
 ※コーエンカッパ係数(少ない項目における偶然の一致を排除)
  0.75以上が信頼のおけるデータと判断される
✅参加観察を行う場合:ラポール(親和的関係)の形成
           観察対象と状況を共有する者という認識
           ※交流的参加観察
           観察者が積極的に変化を起こすアクションリサーチ

✏︎検査法に関して

概要

心理検査を用いて、知能や性格などの心理特性や状態を明らかにする方法
検査法で重要なのは、実証的で科学的の程度=程度の大きさが根拠に繋がる

種類

投影法:曖昧な刺激に対して被検者の反応に心理状態が投影される検査法
    ※例 ローシャッハテスト
その他の検査法は省略※教科書に記載がないため

妥当性と信頼性

他の方法と比べて以下の理由で妥当性と信頼性が高い。

妥当性検証:検査の妥当性が検討されていること、過程は以下の2ステップ
      ステップ1:仮説から論理的に具体的予測を導き出す段階
      妥当であるために満たされるべき条件のリストアップ  
      ステップ2:具体的予測の結果が得られるか明確にする段階
      条件がどの程度満たされれているかの情報の収集と整理
      ※心理学研究の仮説検証と過程はほぼ同じ

一貫性としての信頼性:検査得点が一貫していること
再検査信頼性:時間を置いて検査した2回の検査結果の相関係数が高いこと
       (安定性)
採点者間信頼性:複数の採点者間の結果の相関係数が高いこと
※信頼性が高いことは、妥当性が高いことにはならない。あくまで信頼性は妥当性であることの必要条件であり、十分条件ではない

✏︎面接法に関して

概要

個人を具体的に捉える「個人性」と人と人の関わりや個人と環境との相互作用という「関係性」、この2つの視点を取り入れた研究法
直接人と出会い、コミュニケーションを取ることにより、理解を深めたり、支援を実行したり、新しい理論を構築する

長所

相手の様子や、回答次第で臨機応変な対応が可能

・半構造化面接:あらかじめ質問は準備しておくが、流れ次第で質問を柔軟
        に変更する方法
・構造化面接:質問内容も順番も固定する方法
       ※質問紙調査と異なり、閉じた質問の場合でも被面接者の様
         子や回答の選択や根拠を確認することが可能
・非構造化面接:検証したい仮説が事前になく、大きな目的に向かって、被
        面接者に自由に回答してもらう方法
        ※事例研究にはニケーションカード浄化的

確立した一般法則の中の、特殊性や個別性に焦点を当て異なる確度から検証することができる※ ただし面接法の意義を生かし切るといった観点から一般法則を熟知した上で特殊性や個別性に焦点を当てるべきである

短所

・面接者の態度や被験者との関係性が得られる情報量に差を生み出す
 :被面接者の深層心理に近づくためにはラポール(信頼関係)の形成が必
  要かつ、情報の妥当性や信頼性にも影響を及ぼすことがある
  面接者は基本的態度を心がける必要がある
・言語依存:年齢や知的能力、表現能力や不安や抵抗の程度により情報量や
      質に違いが発生する
・面接者の感度や洞察力が影響を及ぼす可能性もある
 :被験者の言葉や被言語的情報の理解の仕方を左右し、自己分析の的確さ 
  にも差が生じるため、データを活用することや、他の研究法も併用する
  ことで、面接法の信頼性や妥当性を高める必要がある

POINT「面接者は、被面接者が自発的に「言葉」にするのを待ち、「言葉」にするのを強要してはならない」

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