ドリカムは3人、誰が何と言おうと3人
ドリームズ・カム・トゥルーのデビュー前夜を知っている。
というか、私はかつてドリカムの古参ファンだったことがある。
「ことがある」と過去形にしたのは、今はファンとは言えないからだ。
ドリカムに出会ったのは、彼らがデビューする1989年。
なぜ印象が強いかというと、この年は昭和から平成に移り変わった年であり、私が大学を卒業した年でもあるからだ。
どういうきっかけでかわからないが、EPICソニーのカセットタイプのプロモーショングッズ?みたいなものをCDショップでもらい、そこにドリカムの「あなたに会いたくて」が入っているのを聴いて衝撃を受けた。
不思議な感覚、と私がよく言う、説明し難い感覚が現れた。
「夢は叶う」なんてアホみたいにハッピーな名前のバンドのくせに、「あなたに会いたくて」とかぜんぜんハッピーじゃない曲。中村正人が好きなブラックミュージックがベースにある曲作り、吉田美和の末恐ろしいパワフルなキャラとボーカル。控えめなのに存在感のある西川隆宏と3人の程よいバランス。
私はアルバムを買い続け、しかしライブに行く機会は訪れなかった。
ドリカムのライブの日はことごとく仕事が入っていた。
なので、ライブビデオを買ってバーチャルライブ感覚を楽しんでいた。
「MILLION KISSES」と「The Swinging Star」は、交際相手(のちの夫になる人)と同じものを持っていて、ドライブのBGMの半分はドリカムだった。今は行かなくなってしまったけれどカラオケによく行っていた頃、私のレパートリーは「決戦は金曜日」と「うれしい!楽しい!大好き!」だった。特に「決戦は金曜日」を歌うとめちゃくちゃテンションが上がるというパワーソングだった。
だが、時は経ち…。ドリカムが2人に変わる頃、私も出産して子育ての時期に入った。慣れない子育てに、音楽をゆっくり聴く時間も心の余裕もなくし、私は音楽を聴かなくなってしまった。それはそうだ。音大迄進み、仕事になるくらい好きだったピアノを、二度と人前で弾かないとまで思い詰めていた頃だったから。
ドリカムの新譜を私は買わなくなり、以前買ったCDはしまい込まれて、そのうちどうでもよくなってしまった。
私の中では、いつでも吉田美和は「よしだみ」だし、中村正人は「なかむらっち」で、西川隆宏は「にーひゃ」。にーひゃがいないドリカムは私にとって、ホットココアのつもりで頼んだらカフェモカで、そっちはそっちで美味しいんだけどなんかちがうや~ん、というくらい、違和感がある。今もずっと。
どんな形になってもドリカムを応援しているファンの方は素晴らしいと思う。自分はそうじゃなかった。ドリームズ・カム・トゥルーは私にとっていつも「ドリカム」で、「ドリ」と呼ぶのは違和感がありすぎた。
ドリカムのデビュー前夜から、私がドリカムを聴かなくなるまでの年月は、20代の自分が何になるのかならないのかどこへ行くのかわからない若さだけでとぼとぼと歩いていた頃の、きらきらした思い出なのだと思う。人生の折り返し地点を通過してしまった私には、懐かしい記憶。
今の私がこんなふうになるなんて知らなかった頃の私の、心の中の大切な宝物。それが私とドリカムとの関係。
だからこれは捨てなくていい。
でも、私の中でドリカムは3人。誰が何と言おうと3人。