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神奈川県三浦市三崎の看板建築
今回は、本業の左官業のお話と、地域のお仕事。
生まれ育った地元三浦三崎の看板建築の修復工事についてになります。
三浦三崎の看板建築群
生まれ育った町、三崎。まぐろで有名な漁港です。
1975年生まれの私。子どものころはまだ、賑やかな町でした。
商店街は週末歩行者天国になって、ロバが歩いていたりw
パラソル付きテーブルチェアが置いてあったりという記憶があります。
それからあれよあれよとまぐろの水揚げ量と比例するように閑散となってしまいました。
ですが、これがデフォルトで賑やかだったころが異様だったのかもしれませんけどね。。。
そんな賑わいを無くした商店街なんですが、今、散策すると
子どものころには気が付かなかった異様な建築物が。。。。
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看板建築というんですね。建物の正面だけをデコレーションして
文字通り建物自体を看板にしてしまう建築様式です。
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これが三崎下町地区にいくつか点在していることが、左官職人になってわかりました。
どうも、大正の関東大震災後に流行した建築様式らしく、東京の職人さんが
東京でのお仕事が終えた後地方に遠征にいったのではないかな?と推測します。ほぼ同時期に茨城県の石岡町にも看板建築が立てられたようです。
ひときわ目立つこの看板建築
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これ、普通二階部分にこんなにこだわらないでしょう?w
熱海にあった商工会議所が確か銀行の建物を使っていた記憶がありますが、
それに負けないようなデザイン。
左官職人としてウズウズするわけです。
年数が経っているので、パーツもいろいろ落ちてしまってたりしてるので。
なのでこの建物を前を通るたびに心の中でこうつぶやいていました。。。
「修復するのは俺だろ?」
ええ。まったく根拠なしwやったこともないですしw
ましてや持ち主の方も存じません。
若いって素晴らしいですね。思いこんじゃうんです。
誰に任されたわけでもなく、メラメラと使命感が沸き起こるのです。
思考は現実化する
でもそうなんです。思考は現実化するんですね。
2021年の夏に修繕とさらに、シャッター部分の改修がでたので
復元工事と相成りました。俺、すげぇwww
でも、結構私は思考は現実化すると思いますし、
むしろ思ったことしか、現実化しないと思っているんですね。
左官の雑誌に掲載されていた憧れの左官職人さんをみて
「いつか俺もこの人の現場に行ってみたい!!」そう思って
実際にそうなりましたしw
「お前は31歳まで結婚するな!」と言われ
31歳と2日で結婚しましたw
そのいきさつはこちらw
先人との会話
さてさて、実際に現場に取り掛かるわけですが、見聞を広めていたおかげで、
型抜きという技術のお話を聞いたことがあったので、おそらくこうやるのだろうと見立てをつけて、実験・検証・施工となりました。
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@sakikusakan 看板建築の修復するのに、オブジェ作った。洗い出し。セメントを洗い流して、色の石を現すお仕事💕#工作 #左官屋さん #左菊 #洗い出し #左官 #看板建築
♬ ROBOT - Simen Andreas Knudsen
こうやって水で洗いだしてパーツを作りました。
これを貼り付けていくわけですね。
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洋品店の看板の部分も撤去になり、そこは新設になりましたので、
既存の部分を伸ばしていくと、多分こうなるだろうなぁぁと想像して施工。
新たに作り足しをして完成となりました。
いやぁぁ、勉強になりました。
これをオリジナル施工した職人さん達って本当にすごいなと思いますし、
この建築のデザインをされた、このお店のオーナー様の見識の広さに脱帽です。
観光で三崎に来られた時には是非、商店街の二階部分にも注目してくださいね。
一階部分は、戦後の高度成長期にシャッターにしたり
リノベーションして、こういう部分が無くなってしまっていますが、
実は二階部分には当時の面影のまんまが残っていたりします。
地元民として、また左官職人としてこのプロジェクトに参加できて
本当に良かったです。地域の魅力の少しでも貢献できたら何よりです。
左官職人としての地域でのあり方
最近、地方創生なんかにも興味を持っている私。
このようなプロジェクトと地域創生を絡めて
左官屋のアイデンティティなんぞ見えてきた気がします。
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アナログな左官職人。再現性があまり高くないので個人の技量に左右されますし、尚且つそのチームによっても左右されます。
もっと言えば地域の文化によって左右されます。
それは逆説的に、地域の魅力を反映するにはもってこいなのでは?
と思います。
くせのある文化こそ地域の魅力であったり、
美しさの定義が大凡社会全体からずれているからこそ
価値になったりもするわけで。
これから左官職人は地域に根差した活動を軸にした方がいいのではないか?
そのように思いますし、私はそうしていこうと思います。
テクノロジーが発展して、均一化こそが美しさのような錯覚を
起こしそうですが、実はアンバランスこそに魅力があるのだろうと
思いますし、テクノロジーもそこをあえて狙ってくるのだろうと推測します。
不完全で未完で未熟で。そんな脆さこそに
楽しさとか豊かさが生まれるのだろうなぁ。と
私は実感してます。
楽しくモノ創れば、おのずと楽しい空間ができますよね(^^♪