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もの思いの花

「見て、ローズマリーがあるわ、これは思い出のしるし。
愛しい人よお願い、わたしを忘れたりしないで──

──そして、これはパンジー、もの思いのしるしよ」
W.シェイクスピア『ハムレット』

古くはパンジーにも芳香があり、やわらかな香りを漂わせ、野原に自生していた頃があったといいます。

しかしそんな花の虜になった人間が、手に入れようとする熱狂のあまり、野原を破壊しはじめた。それを見たパンジーは、これ以上、人間に探されることがないように、香りを取り除いてほしいと神に願います。以来この花には香りがない、というドイツに伝わる伝説です。

パンジーの歴史は古く、ヨーロッパのキリスト教社会において、この花は「三位一体(神・キリスト・聖霊)の象徴とされ、昔から様々な詩文にも登場します。

よく知られるのは、シェイクスピアの作品。『夏の夜の夢』の中では、パンジーは「恋煩いの花」として、また『ハムレット』では「もの思いの花」として登場します。いずれも劇中の人物の運命を動かす存在として、象徴的につかわれているのも興味深いですね。

『ハムレット』においては、オフィーリアの言葉が印象的。狂気の中でも変わらぬ愛を抱き続けたオフィーリア、さいごは哀しい死を遂げましたが、その傍にはその死に捧ぐ言葉をまとった花たちが、オフィーリアを見守るように咲き乱れていました。

そう、ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』。過去には来日したこともあるようですね。今後に機会があれば、ぜひにもお目にかかりたいと思います。今日もいちりんあなたにどうぞ。

パンジー 花言葉「私を思って」

もの思いのしるし

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