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小泉八雲と虫の声

「たぶん君はトンボが好きだろう」と私が示唆した。「彼らは私たちの回りを飛び回っている。けれど音は立てないしね。」
神代が言う。「日本人はみんなトンボが好きなんですよ。ご存じのように、日本は秋津洲と呼ばれていますが、それはトンボの国(蜻蛉島)という意味ですからね。」

小泉八雲『決定版 小泉八雲全集』「九州の学生とともに」より

小泉八雲といえば『怪談』で知られますが、一方では「虫の文学者」といわれるほど昆虫への造詣が深く、虫の愛好という点においては、研究者さえも舌を巻くほどに詳しかったそうです。

興味を以って「蟻」について書いた作品を手にしましたら、五節まできて「しかし、前に述べた全ては「虫の世界のロマンス」の序文にしか過ぎない。」とあり、その求心の強さに驚きました。一寸の虫にも五分の魂といいますが、まさに蟻の魂をみたかのような筆致です。

八雲は終日のほとんどを、地面に新聞紙を敷いて坐り、蟻の穴や蟻の巣を眺めたり、樹木からふりそそぐ蝉の声や、庭へ放した松虫などの声に耳を傾けて過ごしていたといいます。とかく晩年の八雲というと、虫の生態よりも秋夜に鳴る虫の声に、心惹かれていたようです。

四季折々に花鳥風月を愛でてきた日本人ですが、秋ともなれば虫の声に耳を傾けるのは、私たちの特性でもありましょう。

「虫を真に愛する人種は、日本人と古代ギリシャ人だけである」とは、ギリシャにルーツを持つ八雲の言葉。虫の声に耳を澄ますときは、どちらの心で聴いていたのでしょうね。今日もいちりんあなたにどうぞ。

バラ 花言葉「感銘」

一寸の虫にも五分の魂

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フラワーギフト専門店 「Hanaimo」 店主
普段はお祝いやお悔やみに贈る花、ビジネスシーンで贈る花の全国発送をしている、花屋の店主です。「あなたの想いを花でかたちに」するのが仕事です。since2002
https://www.hanaimo.com/



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