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君ならで誰にか見せむ梅の花
色をもかをも知る人ぞしる
紀友則
あなた以外の、誰にこの梅の花を見せましょう。あなただけです、この美しい色も香りもわかるのは。
これは梅を贈るときに、花に添えて詠んだ歌、とのこと。花ばかりでなく、「あなたはわかる人」と、相手の情趣を誉めているところが、にくいですね。
2月の花といえば、梅。白梅のそばを通りかかったときに、ふわっと広がる香り。あんな小さな花から放つとは思えないほど、主張のある、それでいて懐かしい香りを漂わせて花咲きます。
梅は花や香りばかりでなく、幹や枝も鑑賞する花木です。たくましく屈曲した古木の先には、天に向かって真っすぐに伸びる枝が付き、その造形は、桜や桃ともちがう、梅ならではの品格があります。
とくに白梅に限っては、「紅梅」など他の色にも及ばない気品があり、芳しい香りとともに、昔から多くの詩歌でも賞美され、親しまれてきました。
ぱっちりと咲く花の形もいいですが、その蕾にも、言葉に尽くせない風情があり、すがすがしい香りがあり、別格です。
さて今日は節分。鬼は外、福は内、というけれど、あの梅の香りに気づいたら、鬼も福も、みんなして梅を探しにいってしまうんじゃないかしら、なんて。鬼も探梅、なかなか風流なご趣味です。今日もいちりんあなたにどうぞ。
白梅 花言葉「澄んだ心」
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