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うす紫に寄せて
古い時代から、花に限らず動植物をはじめ、さまざまな自然現象にも、固有の色を見出し名をつけてきた日本人。たとえば春に見る霞には「うす紫」を、その色を霞色(かすみいろ)と名づけました。
霞そのものには色はないのに、春の憂いや儚さをかさねて、こんなほのかな優しい色を想起したなんて。こういう昔の人の感性に触れるたびに、本当に素晴らしいと、感動を覚えます。
とはいえ、昔の人は現代へ残した影響なんて露しらず、霞か雲か、なんて眺めながら、ここではない遠くの世界を感じ取っていたのでしょうけれど。
啄木は、東京で降る雨をながめて、故郷の景色を思い出しています。その故郷に咲く馬鈴薯の花も、美しいうす紫の花でした。やはりこの色は、遠くの世界を思わせる、思慕を寄せる色なんでしょうね。
うす紫に寄せて、今日もいちりんあなたにどうぞ。
馬鈴薯のうす紫の花に降る 雨を思へり都の雨に
-石川啄木
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