「アーツ・アンド・クラフツとデザイン」府中市美術館
2022.11.15@府中市美術館
公園内にある美術館で、市立らしい落ち着いた佇まいが好きです。昔、フィンランドデザイン展を見に行ったのが最後だったのですが、変わらない雰囲気で安心しました。
作品数もキャプションも程よい塩梅で、疲れずに見て回れました。
展覧会って集中するし立ちっぱなしだしで結構体力を奪われます。私はキャプションを読破したい方なので、脳味噌までめちゃくちゃ疲れてしまいます。楽しさが上回れば収穫ですから、めげずにいたいものです。
▽best
「柳の枝」ウィリアム・モリス
淡い緑の色調や葉の輪郭の取り方、筆の乗せ方など、すべてうまい人の絵だ〜!と思った
モリスの作品を見る時、まず高度な画力に目が行ってしまいがちですが、それと同等の才として色遣いが本当に巧みだな〜と思います。
柄物って着色次第では存在感が出過ぎたり、目に痛い姿になったりしやすいと思いますが、そういったノイズがなくむしろ穏やかな印象を受けることから、日常の中に在るにふさわしい美を追求したモリスの優しさが感じられます。
複雑でありながら左右対称の整然とした構成、絶妙な色調の組み合わせ、センスしかないな〜と感嘆しきりでした。
手描きによる線のリズムにしかない不規則なブレを見るのが好きなのですが、というのも線の描き方には人間性や性格が出やすいため、つい注目してしまいます。
パッと見でモリスは器用な人だったんだろうなぁと感じたのですが、繊細でありつつも迷いのない、さっとした線を描けるのってそういう人が多い気がします。
調べたところオックスフォード大学出身だそうで、やはり聡明な方だったのでしょう。
絵を描くこと以外にも、詩や工芸、執筆や講演活動などマルチプレーヤーだったようです。
彼の作品を原寸で目にしたのは初めてだったのですが、意外と細かすぎない(!)んだなという印象を受けました。抜けるところは抜いているというか。
描き込みがみっちりしすぎるとちょっと気の抜けない緊張感が生まれてしまい、日常の中では重苦しくなりすぎるからかもしれません。
アーツ・アンド・クラフツと日本の共通点として、浮世絵のことが挙げられるそうです。浮世絵の制作工程では絵師、彫師、摺師が共同で作業をしますが、多人数で一つのものを作り上げる方式がアーツ・アンド・クラフツの在り方と似通っているとのこと。
グループワークって技量がある程度拮抗していないと成り立たないし、それ以上に制作にかける熱量が同等でないと崩壊しやすいと思います。(心当たりがある…)
きちんと成立していたということは、各分野にプロフェッショナルが揃い、お互いにリスペクトし合っていたのでしょう。
美大には制作能力のみで人の価値をはかり、付き合いを選ぶ人なんかが結構いたりして、わかるようなわからないような人間関係が繰り広げられていたことを思い出しました。
私は良くも悪くもない地点をウロウロしていたので、周囲からはなんとも微妙な視線を向けられていたのですが、なににせよ友情って難しいですね。
公園は冬姿に変わりつつあり、寒空を駆け回る子どもたちの声から元気をもらいました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?