棟方志功記念館
2023.12.09
館内は作家の意向でコンパクトな作りとなっており、定期的に作品を入れ替えて展示していたそうです。日本の老舗ホテルのような落ち着いた内装だったのですが、開館から46年経つとのこと。
老朽化などの事情から24年3月いっぱいで閉館となりますが、県立美術館に作品が移管され、専用展示室もできるみたいです。
棟方の日常を追ったビデオが上映されており、制作の様子が見られたのですが、筆が早いことで有名だったらしく、常人の十倍以上のスピードで描いていました。
早送りしてる…⁉︎と勘違いするほどの挙動で、何かに突き動かされているような、本能的な動きに見えました。
作風から厳格な人物像を思い描いていたのですが、意外にも軽快で気さくな人柄でした。青森という極寒の地に生まれた人ならではのたくましさを見た気がします。
棟方は版画を「板画」という字で表していたのですが、「板の声を聞く」ためだったといいます。木の物質性を大切にする精神を、造語として形に残そうという意思に惹かれるものがありました。
また、作品タイトルには「◯◯の柵(さく)」というように、「柵」という字が多く使われています。
柵とは元々、四国で巡礼の人々が願いや信念をお寺へ納めるための廻札を意味しますが、それにかけて、作品に念願をかけておいていく、柵を打っていく、という心が込められているそうです。
新しい日本語を使うって信念がないとなかなかできないですよね。
何となくキラキラネームの概念を思い出したのですが、それとの違いはやはり説得力ということになるのでしょうか。
造語ってちょっとセンシティブな領域な気がします。日本語って保守的な部分もあり、難しいですからね…
作品はもとより、何か神的なものが乗り移ったようにも見える彼の生き姿そのものに感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。
芸術家って人間とは別の生き物なのかも。