子供の発達障害や精神疾患の原因の1つとも言われる自然欠乏症候群とは
発達障害はここ20年で7倍に増加している
様々な発達障害に悩んでいるお子様やご両親、教職員の方々が多いという話を聞きました。
以下は、文部科学省のホームページに掲載された障害の定期です。
自閉症の定義
自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害であり、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
注意欠陥・多動性障害
ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また、7歳以前に現れ、その状態が継続し、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
文部科学省の調査によれば、全国の公立小中学校では、こうした発達障害児の数が9万人を超え、ここ20年で7倍以上増加していると言います。
少子化の進行も考えると、比率はもっと高いものになっているでしょう。
この増加の背景について文科省は、教育現場の理解が広がった結果という風に説明しています。
理解が進み、ちょっと変わった子も発達障害と呼ばれるようになった。そのぶん、報告の件数も上がった、と。
恐らく、そういう事情もあるでしょう。
ただ、我が子の障害に関する問題について悩んでいる人が多い印象があります。
教師からの話でも、以前と比べて教室内で問題を抱える子が増えたと感じると言われているそうです。
広い意味で言えば、生まれつきのアレルギーを抱えていることも障害の一種に思えます。
あるいは、中学時代に精神疾患の診断を受けて、高校も含めて数年の間学校に行けなかったことも精神障害の一種です。
そのようなアレルギーや精神疾患が時代とともに増加している以上、発達障害もまた、実際に増加しても不思議ではありません。
確かに、人口の一定の比率が、精神疾患や発達障害を抱えることは、社会が認め受け入れていく必要があります。
しかし、もし増加しているとすれば、それは見逃すことはできません。
それでは、いったいなぜ発達障害は増加しているのでしょうか。
自然欠乏症候群とは
発達障害の増加傾向は、決して日本だけの問題ではありません。
また、これは精神疾患や、その対症療法としての過剰な向精神薬の投与についても同様のことが言えます。
1990年代の米国人の10%がそうであったように、プロザック、ゾロフト、ウェルブトリン(いずれも抗うつ剤の商標)のカクテルで、骨の髄まで薬漬けになっていたのだ。
出典 マーク・サンディーン『スエロは洞窟で暮らすことにした』
先進国のこうした状況に対して、今欧米で注目を受けている疾患名が、自然欠乏症候群(Nature Deficit Disorder)です。
自然欠乏症候群という病名が注目を受けたきっかけは、アメリカで2005年に出版されたリチャード・ループ著「あなたの子どもには自然が足りない」という本です。この本が、もう30年以上の間子どもたちの肥満や自傷行為、うつ病の増加に悩んでいたイギリスなどで注目を浴びるようになったのでした。
この疾患は、自然欠乏という名称からもわかるように、自然から遠ざかることによって様々な症状が生じる病態を指し、特に都市部を中心に深刻化していると言います。
以下は、自然欠乏症候群の子どもたちの心身に生じる主な症状です。
・集中力がない。ひとつのことに集中できない。
・落ち着きがなく、じっとしていられない。
・忍耐力がなく、かんしゃくを起こす。
・他人に対する気遣いができず、友達とうまく遊べない。
・平衡感覚が乏しく、よく転ぶ。
・視野が狭く、すぐ横で起きていることや、横から追ってくるものに気づかない。
ここに挙げられた症状は、発達障害の一種であるADHDと似ていると言われています。
実際に、子どものADHDと自然との関連性については研究も進んでいると、作家で自然保護活動家のC・W・ニコルさんは言います。
─── 自然欠乏症候群?
日本ではあまり注目されていませんが、欧米ではすごく話題になっています。ものごとに集中できない、落ち着きがなくじっとしていられない。友だちとうまく遊べない。そういう子が増えて、学校では授業が成り立たないケースまで出ている。
─── 注意欠陥・多動性障害(ADHD)もその原因のひとつとされていますね。
それはこれまで、脳に何らかの障害があるためと見られて、薬物療法や心理療法がとられることが多かった。しかし、最近の研究で、自然の中で遊ぶ経験の少ない子に、そういう障害が多いことが指摘され、「自然欠乏症候群」として欧米でたいへん話題になっているのです。
つまり、幼いときから、自然の中で遊ぶ経験を積み重ねないと、五感が十分に発達しないおそれがあるということです。
出典 自然欠乏症候群が子どもをむしばむ|ナチュラルジオグラフィック
確かに、ある程度は遺伝的な要員もあるでしょうが、同時に、環境要因によって症状を軽減することもできます。
逆に、その環境要因が原因で大人になってから徐々に自閉症やADHDのような症状が出てくるケースもあります。
その環境要因の大きな要素として自然の欠乏というのが影響していることがわかってきているのです。
ここまで、自然欠乏症候群についてお話ししました。
次回は、自然欠乏症候群のチェックリストや改善するための気づきについてお伝えしていきます。
★お読みいただきありがとうございました。