「管理部門が全員退職」のハードシングス裏側。本当にやばいことと、なんとかなること
ビジネスメディア・PIVOTでの『社長改造』企画、ご覧いただいた皆さまありがとうございます。
ワンメディアでは昨年から今年にかけて「管理部門が全員退職」というハードシングスが発生しました。当時は(今も)事業成長を止めないように必死で、動画公開後の叱咤激励コメントを拝見して「あ、うち結構やばいこと起きてたのか…」というのが私の正直な感想でした。
(よくポジティブなサイコパスだね👽と言われるので、若干感覚狂ってるかもしれません笑)
とはいえ「なぜ管理部門が全員退職したのか?」「それって大丈夫なの?」という質問を多くいただきました。よい機会なので、改めて向き合って考えてみました。さらけ出していくことで、少しでもスタートアップの組織課題に悩む方や管理部門をこれから構築しようとしている方にとって参考になると嬉しいです。
ワンメディアで起きた事象
2023年12月〜2024年5月の間に、管理部門のマネージャーおよびメンバーが合計3名退職しました。先に人事担当が辞めてしまったのもあり後任の採用が追いつかず、現在「管理部門ゼロ」という状況です。
2023年12月 人事領域のシニアマネージャー(在籍 約5年)退職
2024年3月 管理部門のシニアマネージャー(在籍 約1年)退職
2024年5月 経理担当メンバー(在籍 約2年)退職
ざっくりした内容はぜひ『社長改造-30DAYS-』前編をご覧ください。
時系列で組織図にすると、こんな感じです。
↓3名が退職
↓半年後の今
「原因は〇〇」というシンプルな問題ではなく、複合的な問題
「なぜ管理部門が全員退職したのか?」
という問いに対して、〇〇です。という明確な回答はできません。
私や明石など経営陣個人から起因する問題、
会社の構造的な問題、フェーズの問題、
マネジメントの問題など。
そのなかの1つが、明石個人が「本当にやりたいこと」が分からなくて悩んでいることであり、PIVOTの『社長改造』では、エッグフォワード代表・徳谷さんが主にこの点に集中して切り込んでくださいました。
退職した3名それぞれ個別の状況はあります。「スペシャリストとしてキャリアを積みたかったが、兼務が発生し集中できない」「ワークライフバランスが合わない」「スタイルが合わない。思っていたより権限がない」など。
連続して複数人が退職した時点で、再現性ある課題が存在することは確かです。退職メンバーからのフィードバックを元に整理すると、管理部門においてはこのような課題があったなと捉えています。
■権限設計:入社時の想定・期待値、経験、スキルとのギャップ
■兼務アサイン:スペシャリスト志向なのにジェネラリスト的な業務を依頼
■モメンタム:事業部側のモメンタムに管理部門を巻き込めなかった
■評価:兼務領域含めた業務に対する評価とフィードバック不足。経営陣との距離感
😢 残念ながら、数字は全てを癒やさない・・・
不思議なことに【管理部門】が退職している当時から、組織図の右側にある【事業部】はむしろチームも拡大し事業も好調なんです。ミドルマネージャーが内部昇格で生まれ、チームマネジメントも頑張ってくれています。売上は上がり、事業は黒字化、広告賞受賞などの成果も上がっています。
COOとして、今最も反省する点であり、あえて言うなら “学び” になったのは、
事業部のマネジメントと、管理部門のマネジメントは違う
ということ。
営業 → 営業企画 → BizDev →(ONEに転職)営業部長 → 事業責任者 → COO というキャリアの経験をしてきた自分にとって、
「数字が全てを癒やす🔥」(事業がうまくいけば、組織のモメンタムも上がる)
と思ってた節があります。
数字で実績が分かりやすく、それゆえにスポットライトが当たりやすいのは事業部のメンバーです。管理部門は、もちろん直接的な貢献もありますが、間接的な貢献を可視化できる仕組みをつくる、あるいはそれができるマネージャーを採用する必要があると思います。
また経営陣である以上、自分のバックグラウンドではなかったとしても管理部門側の業務解像度を上げないと、課題の察知や適切な評価がしにくくなります。直接部門と間接部門の成果の上げ方は違う、という点に気づけていなかったです。
管理部門ゼロにどう対応しているのか?
人がいなくなったとしても、管理機能は会社を回すうえでは欠かせません。
今ワンメディアでは、外注とマネジメントメンバーによる兼務を使い分けて、なんとか致命傷な問題は発生することなく進んでいます。
管理機能が弱いなか、メンバー・ミドルマネージャーには負担がかかっていると思います。その前提の元ですが、実は意外な発見もありました。
明石・余頃・マネージャーで領域や業務を兼務、プロに外注する体制になったことで、管理部門のオペレーション設計や、事業と連動したスピーディな採用活動が進みました。この変化により、ワンメディアの管理部門の推進には、いわゆる「Biz Ops」や「HRBP」的な機能も重要だったということが発見できました。
みんなの負担を最小限に。外注&兼務体制の構築ステップ
もともと専任担当が3名以上でやっていた業務を、外注とマネジメントメンバーによる兼務でどう分担したのか。外注&兼務体制の構築ステップについて紹介します。
管理部門と言われるのは、経理・財務・法務・労務・人事(採用/組織開発)・総務といった領域です。それぞれ専門領域に思えるのですが、どの領域も共通して、4つの業務フローに分かれていると捉えています。
方針起案と意思決定は必ず内製化し、マネージャー以上の責任者が担当する必要があります。一方で、連絡窓口や実務領域は、外注サービスやITツールを積極的に活用できます。できるだけ兼務による社内メンバーの負担を減らしながら、外注化で発生するリスクを最小化するため、各領域において業務を下記のステップで分解していきました。
救急医療でいう「トリアージ」みたいな感覚です🚑🚨
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【1】責任が伴う業務か?
・伴う場合:社内のマネージャー以上が兼務担当
・伴わない場合:マニュアル化できる実務である
→ 【2】に進む
【2】その業務は事業知識が必要か?
・事業知識が必要な場合:社内のメンバーあるいはアシスタントさんで兼務
└できるだけNotionなどでマニュアル化し、社内でも分業する
・事業知識が不要な場合:外注可能
→ 【3】に進む
【3】その実務は自動化できるか?
・自動化できる:ITツールを組み合わせて自動化。Slack / freee / UPSIDERなど。
・自動化できない:プロや外注サービスにお願いする
└やり取りにストレスがかからないよう、Slack等でワークフロー化する
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ワンメディアで発生していた業務を分解すると、下記のように切り分けができました。ピンク色のエリアが、外注している領域です。
外部発注のときに注意していること
この外部発注への移行は、「管理部門が全員退職するかも?」という黄色信号🚦が点いた瞬間に準備しはじめ、3ヶ月ほどで移行しました。社内窓口や方針起案の一部を私が担当していますが、スムーズなやり取りのために特に注意していることがあります。
すぐにヘルプを出す、逆にすぐに巻き取る、裏側も見せるということです。
最初の相談のときに、
🙋♀️「管理部門がいない状況。自分(余頃)が担当するが、営業畑なのでバックオフィスの専門知識が抜けている。迷惑かけると思うが、事業判断やメンバー指示はすぐにできるので何でも言ってほしい」
と一言伝えるようにしています。そうすると、お互いヘルプを出すタイミングが分かり、いらぬストレスを社外の方にかけることが減ると思います。
また「裏側も見せる」も最近重要だと気づき、経営陣でやっています。ここは明石が率先して、カラオケやボウリングに会計士さんたちを誘っていまして、私も「どんどん社内の雰囲気を見せちゃったほうがいいんだな」と気づきました。うちの会計士のお二人は歌うま&ノリがよく、先日は『Real Face』を披露してくれました🎤笑
「管理部門が全員退職」は確かに危機だったのですが、そのなかでも非常に幸運だったのは外部のプロに恵まれたことです。
CASTER BIZのご担当、会計士さん、社労士さん、採用媒体であるビズリーチのご担当、UPSIDERのご担当・・・ 私の曖昧な相談から課題を特定していくこと、専門知識からのフォローアップ、ホスピタリティが素晴らしい方々ばかり。私自身、本業(?)は営業をしているので、営業パーソンとして学ぶところが多いです。
業務切り分けしたから見えた、管理部門の理想の人材像
とはいえ、管理部門がいないと “やばいこと” は存在する
ご紹介したように、外部のプロのおかげでオペレーション上は回っており、致命傷は避けられています。管理部門が社内にいないことはリスクですし、おそらく組織に対してジワジワと悪影響は起きているのでしょう。
業務を切り分け、切り分け・・・さらに事業部メンバーでできるだけ兼務して対応し・・・ それでもやはり “管理部門がいてほしい!!” と思うことはあります。
例えば、人事・労務領域について。
■採用における候補者の体験が悪い
私含め、事業部役員・マネージャーで採用プロセスの全てを回しています。その際どうしても、候補者さんへの対応がしきれず、オペレーショナルな候補者体験になってしまうときがあります。また、面接基準がどうしても事業部視点になってしまい、「今すぐ来てくれる方」などを優先してしまいがちです。人事担当によるフラットな目線は必要です(実際に応募数は上がったが、その分歩留まりは悪くなっている)
■メンバーにとって労務的な相談がしにくい
労務対応も最低限になっており、後手に回ってしまっています。メンバーにとっては、社内に専任担当がいないことは不安でしょうし、社内の相談先が自分の管掌組織の役員(余頃)だと、自分の評価ラインでもあるので「相談したいのにできない」という状況にもなっているだろうなと思います。
特に人事・労務領域は、外注や兼務でできる範囲に限界があります。組織フェーズに関わらず、組織と人のことを集中して考え抜ける【HR専任担当】は必要だなと感じます。
一方財務・経理・法務など、HR以外は比較的外注しやすいです。その分、社内の担当者を立てるとしたら、オペレーション構築や社内メンバーへの浸透ができるソフトスキルのほうが重要だなと思っています。
求めるのは「スペシャリスト」ではなく「ジェネラリスト」かもしれない
管理部門の退職要因を、次の採用に活かしたいと思っています。特に「ワンメディアのフェーズ、事業モデル、組織スタイルで活躍できる」人材像は、以前からガラッと変えました💪
■AS IS
以前は外注という武器がなかったので、各領域のスペシャリストを求めていました。一方で、実際にジョインしていただいた後に、「領域兼務」や「プロジェクトリード」「マネジメント」などのジェネラリスト領域を求めてしまい、お互いにフィットしなかったことが退職の背景の1つだと思います。
■TO BE
今は業務整理も進み、「本当に内製化が必要な業務」が見えてきました。30〜50名組織規模であれば、管理部門こそ「ジェネラリスト」が必要だなと感じています。
先述の管理部門の業務切り分けの図で表すと、下記の赤色の領域です。
✅️ 経営チームとともに各領域の上流設計ができ、プロやメンバーから意見をもらいながら意志決定ができる
✅️ また外注 or 内製などの業務を切り分け、社内のオペレーションフローを構築することができる
「こういう人って管理部門長でも経理担当でもないですよね?何ポジションなの?」と、代表の明石や、ビズリーチのご担当に色々と相談していたのですが・・・
「まさにこれ!」というのを見つけました。
それが「SBO」という概念です。
「スタートアップバックオフィス(SBO)」というのがあるらしい
詳しくは株式会社hokanでバックオフィスをされている、安田 ともこさんのnote記事に書かれています。
このnoteを読んで、私と明石は「まさにこういう人やん!」と膝を打ちました。(“そんな人は稀” とのことなのですが…笑)
特にポイントなのが下記です。「SBO」に大事なのは下記のようなソフトスキルであって、会計知識や資格などのプロであることではないんですね。
「100% 絶好調」ではないけど、意外となんとかやっている😊
以上が、「管理部門が全員退職」の裏側と背景、今の状態についてのシェアでした。
突然ですが、漫画『東京リベンジャーズ』の第219話に、
「組織を“強く”することよりも、“デカく”することを大事にしちゃってる」とチームの方針に警鐘鳴らすシーンがあるんですね。(「梵」というチーム首領の瓦城千咒が、主人公・タケミチに言うセリフ)
私はこの “強い組織” と “デカい組織” の考え方がとても好きで、組織のポジションや人数を優先するのではなく、強いメンバーと強い構造にしたいです。
「全員退職」というのはもちろん避けるべきことなんですが、人数が減って “デカく” はなってないものの “強く” はなったんじゃないかなと思ってます。
ワンメディアではSBOに挑戦する方を募集。
「ジェネラリスト力」鍛えられます✊
管理部門がいないので、ゼロから基盤を作ってくれる方を募集しています。まさに「SBO」、ポータブルなスキルを磨いてジェネラリストとして活躍したいという方ぜひ一緒に働きましょう。
↑ 手前味噌ですが、最初の6ヶ月くらいは私・余頃が並走して一緒にオペレーション構築や方針設計をやっていきます。ご興味ある方、カジュアル面談も受け付けますので、ぜひご応募ください。朝ご飯食べに行ったり、カフェでお茶したりも大歓迎です🥞
↓ 会社紹介資料もぜひご覧ください。
📕 一緒に見てね&読んでね
■『社長改造-30DAYS-』前編
■『社長改造-30DAYS-』後編
■明石の想い
■ミッション・スタイルをつくった話
以上です!最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
叱咤激励のコメントお待ちしております。